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day.7
お母さんと会った時の服を着た。
今は朝の八時。お母さんはまだ眠っている。昨晩はあまり眠る事ができなかった。ずっとずっと考えていた。
──お母さんがもう一度お母さんになるか否かを。
一晩悩みようやく結論を出した。
そして、躊躇せず貴重品だけ持って外に出た。
***
九時。お母さんが起きてきた。私はさっき入手したものを後ろに隠す。
お母さんは目の前に真剣な表情で腰掛けた。お母さんの服も、あの時と同じで、ラムネ色のスカートだ。
視線が交差する。私は一呼吸ついた。
「お母さん。私はずっと考えてきました。なんでお母さんはいないのだろう、私が嫌いなら遠くに住めばいいのにって。身勝手だと思ってた。幼い私に八つ当たりしてたのも許される事ではない」
お母さんが一回り小さくなった。
「──でも」
窓から光が差し込みお母さんを照らす。
「この一週間楽しかった。お母さんがこんなに構ってくれて嬉しかった。寂しさを埋めてくれて……だから」
どうしてか震える声を必死に抑えながら、背中で隠していたそれを差し出した。
「……これは?」
お母さんは目を見開いて呆然としていた。
「ひまわり。お母さんの笑顔がひまわりみたいだから……それで……それで……私の、お母さんになって、ください」
鮮やかな黄色のひまわりが光を反射して眩しく光る。
「……ありがとう、ルカ」
お母さんは一粒の涙を流した。キラリと涙が光に反射する。
一週間お母さんでなくて、一生のお母さんになりますように。
祈りを込めながら、ひまわりをそっと渡した。
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