day.1

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 お母さんの家は古びたマンションの一室だった。  お母さんは靴を揃えずに脱いでいたのが嫌だった。  突き当たりがリビングになっている。とりあえずアイスを冷凍庫に入れて部屋を見渡した。  部屋はとにかく散らかっている。ちゃぶ台には新聞やら紙屑が置きっぱなしだし、服も床に置かれていた。足の踏み場はあるものの、不快だった。  私は自他共に認める片づけオタクだ。と、いうか潔癖症なんだろう。  本当に血の繋がったお母さんなんだろうか。  モヤモヤを抱えながら、まだ綺麗な所に腰掛けた。  お母さんは適当に腰かけると、何かを思いついたのか笑みを浮かべた。 「ねぇ、ルカ。これから買い物行こ」 「え、今から、ですか?」    時計を見ると一時を回った頃。確かにまだ時間はある。けれど、大嫌いな人と出掛けるのは嫌だ。 「うん、洋服買ってあげる。お母さん()で過ごす時必要でしょ」 「別に……家に帰って取りに行けばいいんで」  ここと私の家は商店街を挟んですぐだからそこまで遠くない。  商店街は緩やかな坂で、お母さんの家は坂の下、私の家は坂の上だ。 「いいじゃん、娘との買い物って夢だったの」  じゃあ、なんで一緒に住まないのだろう。何故私を捨てた?  釈然としない気持ちを抱えながら、渋々暑い外へもう一度繰り出した。  電車を乗り継いて、チェーンの服屋に入った。服なんてずっと買っていない。  お父さんに言いにくいからだ。下着も自分で買っている。  お母さんという同性が居なければ、なんだか損した気分になる事も多い。  だからといって今更お母さんを求めている訳ではないのだけど。
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