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お母さんの家は古びたマンションの一室だった。
お母さんは靴を揃えずに脱いでいたのが嫌だった。
突き当たりがリビングになっている。とりあえずアイスを冷凍庫に入れて部屋を見渡した。
部屋はとにかく散らかっている。ちゃぶ台には新聞やら紙屑が置きっぱなしだし、服も床に置かれていた。足の踏み場はあるものの、不快だった。
私は自他共に認める片づけオタクだ。と、いうか潔癖症なんだろう。
本当に血の繋がったお母さんなんだろうか。
モヤモヤを抱えながら、まだ綺麗な所に腰掛けた。
お母さんは適当に腰かけると、何かを思いついたのか笑みを浮かべた。
「ねぇ、ルカ。これから買い物行こ」
「え、今から、ですか?」
時計を見ると一時を回った頃。確かにまだ時間はある。けれど、大嫌いな人と出掛けるのは嫌だ。
「うん、洋服買ってあげる。お母さん家で過ごす時必要でしょ」
「別に……家に帰って取りに行けばいいんで」
ここと私の家は商店街を挟んですぐだからそこまで遠くない。
商店街は緩やかな坂で、お母さんの家は坂の下、私の家は坂の上だ。
「いいじゃん、娘との買い物って夢だったの」
じゃあ、なんで一緒に住まないのだろう。何故私を捨てた?
釈然としない気持ちを抱えながら、渋々暑い外へもう一度繰り出した。
電車を乗り継いて、チェーンの服屋に入った。服なんてずっと買っていない。
お父さんに言いにくいからだ。下着も自分で買っている。
お母さんという同性が居なければ、なんだか損した気分になる事も多い。
だからといって今更お母さんを求めている訳ではないのだけど。
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