day.4

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 午前九時。昨日の疲れがあるのかまだお母さんは眠っている。  お母さんに買ってもらった三着目の服に袖を通し、無造作に置かれていたメモとペンを取って『ちょっと散歩してきます ルカ』と記した。  貴重品を持って一人外に出る。  雨はまだ弱い。傘を持っていないけれど、これくらいなら傘が無くても大丈夫そうだ。  人気(ひとけ)が少ない商店街を進み、百均に入り、さっさとゴミ袋とビニール手袋、雑巾やビニール紐などを購入し店から出た。 「あ……」  急に雨脚が強くなっている。一瞬百均でビニール傘を買おうかと思ったけれど、歩いて数分なのに買うのが馬鹿馬鹿しい。少し弱くなったら帰ろう、とため息をついた。  ザーッと雨音だけが響く。人の姿はほとんどなかった。 「──ルカ。ルカー?」  雨音を遮る声がした。幻聴かと思ったが、その声は聞き覚えがありどんどん大きくなっていく。そしてレモン色の傘を持ったお母さんが駆けて来ると同時に、水しぶきが細かく散った。 「……お母さん、どうして」  唖然としていると、少し照れ臭そうに、でもどこか嬉しそうにお母さんは微笑みを浮かべた。 「メモ見たの。したらさ、雨すごいし……とりあえず商店街かなーって思ってきたの。そしたらビンゴ! 傘一個しかないから狭いけど一緒に帰ろ」  ほら、と傘を軽く上げた。どんよりとした風景に鮮やかな色が綺麗に映える。少し迷ったが傘の中へ入った。   「さ、帰ろ」  肩と肩がぶつからないように歩いていると、左半身が濡れてしまった。 「もっとこっちおいで」  狭くて窮屈だけど、さっきより濡れる面積は減った。  大嫌いなはずなのに、不思議と密着してもそこまで嫌ではない。  お母さんはレジ袋を指して「ねぇ」と言った。 「何買ったの?」 「……掃除用品。お母さん、今日お部屋掃除しない?」 「え、わざわざ買ってたの? ありがとう。お母さん頑張るわ」 「……手伝うよ」 「ありがとう、ルカ、ごめんね」  ごめんね、ともう一度言われた気がするけれどスルーした。  少々濡れながらだか、無事お母さん家に到着。早速片付け開始だ。
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