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昼食後はメリーゴーランド、コーヒーカップ、フリーフォールなど目についたものをどんどん乗っていった。遊んでいる時は楽しそうなお母さんだったが、移動中や待ち時間は何かを憂いている雰囲気で、少し話しかけづらい。
一体どうしたのだろう。その理由が分かったのは、少し後だった──
カァ、カァ、と烏が橙色の空を横切った。
最後に観覧車に乗ろう、と二人で向かった。
そう待つ事なく乗り込む事ができた。りんごみたいな形のゴンドラは少し風に吹かれてゆらゆらと揺れるが、怖さはない。徐々に上昇していくのつれ、ワクワクしてきた。
一方でお母さんは静かだ。時計の針で言う『九』すなわち四分の一の差し掛かり頃、唐突にお母さんは頭を深々と下げ「ごめんね」と言った。
「実は、ここ、昔、ルカとお母さんとお父さんで来た事があるの。三人の最後のお出かけだった……」
「……えっ?」
脈絡のない話に目を見開いた。
「こんなお母さんでごめんなさい」
「どうゆう事?」
全く話が読めない。
お母さんは顔をあげた。目は赤く染まっている。
「お母さんは弱くてあなたを捨ててしまったの。ごめんなさい。ちょっとだけ話させて頂戴」
「……うん」
一体何を明かされるのだろう。好奇心と、不安感がミックスされた感情を抱きながら頷いた。
カコン、とゴンドラが頂上に登った。
「ルカと別れたのはルカが年少の時。情けないし、謝っても許されることではないことをした──」
***
「悪戯しちゃダメって言ってるでしょ!」
「やー!」
私の娘・ルカは年少になった。そんなルカはかなりの悪戯っ子だ。そして落ち着きがない。今日は幼稚園でお友達のおもちゃを奪い、それを注意された途端そのお友達の腕に噛み付いて泣かせてしまったようだ。もちろん謝り倒し、お友達のお母さんは「大丈夫ですよー」と許してくれたのだが、ルカはけろっとしている。
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