day.1

1/2
前へ
/11ページ
次へ

day.1

 突然、ラムネ色のロングスカートが目に飛び込んできた。 「あ」  最寄りのコンビニから出て来た時、お母さんに会った。  私が苦手で、一方的に嫌っている存在だ。  気づかれないように立ち去ろうとしたが無駄だった。  歓声を上げながら私の所に接近してきた。 「ルカ、久しぶり」 「……うん」  会うのは約一か月ぶりだ。  お母さんは一緒に住んでいない。私が幼稚園の頃、家を出た。  お父さんや私が嫌いなら遠く離れた所に住めばいい話なのに何故か、近所に住んでいる。  昔から何を考えているのかさっぱりわからない。 「ねぇ、ルカ今夏休み?」 「そう、ですけど」  可愛げのない声が出た。  どうしても他人行儀になってしまう。母と一対一に関係に慣れていないのだ。いまいち距離感が掴めない。  私を捨てたと言う過去もあり、話したくもない。  お母さんは私の態度を気にも留めないで、朗らかに笑った。 「もー敬語辞めてよ。それよりルカ、うち来ない?」 「……行かない。アイス、溶けますし」  ビニール袋をチラッと見た。なんで引き止めてくるんだろう。  暑いし、アイス溶けるから帰りたいんだけど。大嫌いな人となんて声を交わしたくない。 「お母さん()にも冷蔵庫あるよ、おいでってば。後、泊まってかない?」 「嫌です」 「そう言わずに、さ。(たける)くんには言っとくから」  突然なんなんだろう。訳が分からない。  健くんとはお父さんのことだ。  断りたかったけれど、頷かないと帰れなそうなので適当に頷いた。 「やった! じゃ、おいで」  ジリジリと太陽が照りつける中、二人並んで歩いた。お母さんと並んで歩くのは久しぶりだ。  道中、お母さんは一方的に話し続けていたので相槌は打っていたけれど全く別にことを考えていた。  なんで急に家に誘って来たんだろ。あ、お父さんにLINEしとかないと。夜ご飯作れそうもないし。お父さんは帰るのが遅いから、私が晩ご飯を作る事が多いのだ。  あぁ、めんどくさい。お母さんは人を振り回す天才かもしれない。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加