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執事は秘密の舞踏会を開催します
「では、帰りましょうか。アイリ様」
アイリ様と私、ルチア様とルチア様の父親、それにボディーガードさんとで王妃様に挨拶を済ませ城を後にします。
え?ニコラス?申し訳ありません。私、犬と蜥蜴の闘いなどまったく興味が無かったので1ミリも見ておりませんでした。
……あぁ、勝敗ですか?アイリ様に危害さえなければ、あの犬が勝とうが負けようが毛皮にされようがどうでも良かったのですが、一応勝ったようですよ?
そうそうルチア様の父親ですが、会場に見当たらないと思ったら、ルチア様が闘っている間にニコラスを助けに行っていたようです。
自分の娘のルチア様は大丈夫でもアイリ様を闘わすわけにはいかないのでニコラスを脱走させてアイリ様の代わりに闘わそうとしたとか。さすがルチア様の父親です。素晴らしいですね。
作戦通りアイリ様の出場はうやむやになり、ニコラスが竜人と闘いました。
アイリ様をお嫁さんにすると言うのもニコラスが母親に勝ってしまったので王子は諦めて……ませんでしたね。でも「わーうるふをぜったいころすです!」と叫んでいたので、しばらくはニコラスが狙われるだけになるでしょう。
ついでに言うならば武闘会は先手2勝で王妃様の勝利となり、竜人は側妃におさまりました。
王様?王妃様と竜人に挟まれて散々お仕置きされ、すっかりやつれられておりましたね。どうでもよいですが。
とりあえず王妃様からお褒めの言葉を頂き無事に帰れることになりました。
*****
ルチア様と別れご実家に帰宅後、ドレスから部屋着に着替えられたアイリ様は椅子に腰掛けため息をつかれました。
「なんか疲れちゃったね」
「では後で甘い物でもご用意いたしますね」
私がそう言うとアイリ様は嬉しそうに微笑まれます。そしてふたりで深夜のティータイムを楽しみました。
たまにはご褒美もなくてはね?
え?誰に?そんなの決まっています。私です。
アイリ様とふたりでこうしてゆっくり過ごすと、不思議な気分になるのです。誰にも邪魔されない時間は貴重ですよ?
ナイトはだいたいおとなしくしていますが、最近は犬がすぐ邪魔してくるんです。……おや?そういえば今日は犬が邪魔しにきませんね?どうでもよいですが。
竜人の問題もだいたい片付きましたし、明日からはゆっくり過ごしたいものです。
そんな事を考えていると、アイリ様が立ちあがり私の目の前に来ました。
「どうなさいました?」
「あのね、舞踏会だって聞いてたからダンスすると思ってたでしょ?でもそれどころじゃなかったし……あの、えっと」
自分で言い出したのに急に頬を赤くされて、もじもじし始めました。
あぁ、そういえば部屋着もわざわざフリルのワンピースタイプを選ばれておられましたね。
私は立ちあがりアイリ様の手を取ると、その手にそっと唇を落とします。
アイリ様がさらに真っ赤になり、上目使いで私を見てきました。
「アイリ様、私と踊っていただけますか?」
「……はい」
窓から入る月の光をライトにして、ふたりきりの秘密の舞踏会が開催されたのでした。
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