君がいた未来へ 外伝

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『マリアの未来日記 アラカルト』              「未来のふたりに」  ノックのあと、制服姿の子が入ってきた。黒のショートヘアの女子高校生。 「こんにちは」 「よろしくお願いします」  僕は、大人しそうな女子高生の様子を窺った。 「高校生ですよね」 「はい、2年生です。あの・・・」  かわいい顔立ちの彼女が困った表情を浮かべた。 「はい?」 「鑑定料を少しずつ払っていくことってできますか?」 「ああ・・・」  僕が心配していた通り、高校生に払える金額ではないと思っていたが、やっぱりと思った。 「少しお待ちください」  僕は、占いの部屋に入って、マリアに訊いた。マリアは微笑んでいた。恐らくもう、事態を把握している。 「・・・というわけなんだけど」 「うん。分割払いかー。彼女、あまり手持ちがないね」 「断る?」 「彼女は助けてあげたい。とりあえず、通して」 「わかった」  僕は受付に戻って、彼女に言った。 「とりあえず、占いの部屋に入ってみて」 「わかりました」  彼女はほっとした表情をみせて、部屋の中に入っていった。       * 「こんにちは。おかけください」 「初めまして、マリアさん!」  彼女がマリアの向かいの椅子に座った。 「お金の事情は分かりました。それは一旦置いときます」 「ありがとう」 「あなたが相談したかったのは、恋の悩み」 「はい。そうです!」 「同じクラスに気になる人がいるのね。告白しようか迷っている」 「はーい!」 「彼の気持ちが知りたいというわけか」 「もしフラれると決まっているなら、告白しないほうがましかなーって」 「傷つきたくない? でも、恋って傷つくのもありじゃない?」 「でも、断られたら、学校にも行きづらくなるし・・・」 「もし両想いだったら?」 「嬉しいです。マリアさんには、わかるんですよね」 「はい。私には彼の気持ちが分かりましたよ」 「お金は何とかします。教えてくれませんか?!」  彼女は立ち上がって、マリアに近づいた。マリアは微笑んだ。 「私も、お金のことはあとで考えます」 「じゃあ、教えてくれるんですね?」 「その前に、あなたの覚悟を聞いておきたい」 「私の覚悟・・・?」 「どんな運命が待ち受けているとしても、彼を好きでいられる?」 「はい、私、どんなことがあっても彼のことが好きです!」 「じゃあ、よく聞いて」 「はい!」 「今、彼は、あなたのことを気にしていません」  彼女は一瞬でひいた。そして暗い表情になった。 「彼の周りにはたくさんかわいい子がいるよね。彼が部活で親しくしている子もいる。だけど、その子に恋してるわけでもないわ」 「そうですか・・・」 「彼は、最初に告白してくる人と付き合うようになります」 「・・・はい?」 「あなたに、決めますよ」 「えっ?! ほんとですか!?」  彼女の瞳が輝いた。 「でもね、彼はもうすぐ転校するからね」 「えーっ?! 私、どうすればいいの?」 「言ったでしょ? 『どんなことがあっても彼のことが好き』って」 「告白しても、すぐに別れちゃうってことでしょ?」 「離れるだけよ。そこからがあなたたちの試練です」 「どうしよう」 「占いは以上です」  彼女は縛ら間の間、途方に暮れた。そして気を取り直したように言った。 「そうですよね。わかりました。私、がんばります。マリアさん、ありがとう。で、料金は・・・?」 「あななたちが結婚して余裕が出来たときにでも来てください」 「えっ? 結婚って?!」  マリアが微笑んだ。            『マリアの未来日記 アラカルト』              「未来のふたりに」 完
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