第15話 まずは商談

1/1
前へ
/130ページ
次へ

第15話 まずは商談

 相変わらず俺は遅寝、遅起きだ。  この町の人は日の出と共に活動しだす。  俺は7:30頃に起き朝食をとる。  ビルさん達も心得たもので、その頃に朝食を作ってくれている。  食べ終わってから部屋でダラダラしてから出かけるので、行動するのは大体10時頃からだ。(と、言うより宿泊客は俺しかいないことが多い。大丈夫か?)  と、いう事で俺は商業ギルドに来ている。  中に入ると暇な時間帯なのか前回同様、受付はノエルさんという女性だった。 「エリアスと言います。ギルドマスターのアレックさんに会いたいのですが」 「お約束はしておりますか?」 「いいえ。していませんが損のないお話だとお伝えください!」 「少々お待ちください」  と、ノエルさんは奥にさがり、しばらくしてからギルマスの部屋に案内された。  部屋に入るとアレックさんが 「今日はなんのようだい?あぁ、そういえば精選処理の件かい?」 「いいえ、今日は精選処理ではなく別件なんです」 「ほう、どんなことかな」 「これです」  俺はマジック・バッグから出す振りをして、ストレージから昨日食べきれなかった野菜スープ、野菜炒め、肉料理、茹で野菜を出した。  たくさんあったので食べる振りをして、ストレージに入れておいたのだ。  定番の時間停止機能付きなので暖かいままだ。  ストレージから出した時、アレックさんの目が『キラリ』と光ったのを俺は見逃さなかったけど。 「これは?」 「何も言わず、まずは食べてみてください」と、フォークとスプーンを渡した。  そして野菜スープを口に入れるとアレックさんは 「「「「 なっ、なんだ。この味は!! 」」」」 と、驚きの声を上げスプーンを落としそうになった。 (味の大革命や~!と言う声が聞こえた気がする) 「『うま味調味料』です」 「『うま味調味料』?何だいそれは」 「あるものから『うま味』だけを取り出した調味料です。そのため、何にでも合い 美味しくなるんです」  と、言いながらストレージから『うま味調味料』が入った入物を出して見せた。 (『うま味調味料』に椎茸と鰹節のダシ汁を入れた、合わせダシだから更に美味しくなるんだ) 「それは凄いな。で、君はこれをどうしたいんだい?」 「ギルドで調味料を買上で扱ってほしいのです。そしてそれを作るための、住居兼作業場を借りようと思いまして」 「自分で売るより利幅は減るがいいのかい?」 「はい、かまいません。自分で店を開き売る手間や経費を考えたら、商業ギルドに卸したほうが全国的に流通しますから。薄利多売、細く長くできればいいと思っています」 「ほぅ、目先の利益を追う商人が多いのに薄利多売、細く長くか。いい心がけだ。 で、いくらで卸してくれるんだい?」 「俺が卸す金額の2倍でギルドが商人に売り、商人がそれに1.5倍かけて売る。 最低3倍が、店頭に並ぶ値段でしょうか?」 「ふむ、君とギルドと販売する商人の間で値段を決めたいという事か」 「は、はい、どの店でも手軽な同じ金額で購入できれば買いやすいと思うので」 「価格統一か、そのような考えの商人は今までいなかったよ。この街の中では統一 し、他の街に出す時は移動の経費が掛かるから例外としよう」 「で、いくらで買ってもらえますか?値段がよくわからなくて」 「ははは、欲がないな。では20,000円でどうだ?」 「えっ!」 「まあ、ま、そうだよな。安いよな。では30,000円で仕入れよう!」  安くて驚いたのではない。高くて驚いたのだ。  原価をいえば蓋付の入物を入れても1個当たり326円!  60個売ると100,400円の儲けがでる!  2,000円でギルドに卸しても利益率83.7%、高すぎ!! (商品より入物の方が高いんですけど) 「いえ、そうではありません。2,000円にしてください!お願いします」  その後、売側が値段を下げる交渉が続き結局2,000円に収まった。 「本当に欲がないな。他の商人に見せてやりたいくらいだよ」 (いえ、欲がないのではありません。アレックさんの言う値段で売ったら売値が10,000円近い調味料なんて、原価が高くて屋台や飲食店では使ってもらえないよ。調味料は消耗品!たくさんの人に使ってもらって、リピートしてくれた方が長い目で見ると儲かるんだ) 「ただ商品名だが『うま味調味料』は長いな」とアレックさん。 「そうですね。では『味』の『元』と書いて『味元』というのはどうでしょう」 「『味元』か」 「ええ、そうです。『味元』、『味元(あじげん)』です」 「えっ………………………………………… そ、そうか、(汗)、良い名だ」  こうして交渉は無事に済み取り合えず、月200個の契約から始まることになった。  事前に税金8%を引いてもらったが、それだけでも360,000円超えの利益になる。  ますます駄目人間になりそうだ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  『うま味調味料』の名は『味元(あじげん)』です。  どこからか文句が来るとかは無いですよね?
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

369人が本棚に入れています
本棚に追加