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第16話 家を借りよう
商業ギルドに『味元』を卸す交渉も無事に終わった。
「それから住居兼作業場がある、物件を探しているのですが」
「そうか担当を呼ぶから、少し待ってくれないか」
ドアを開け誰かを呼ぶのかと思ったら、ノエルさんが資料片手に現れた。
「担当のノエルと申します。どういった物件をお探しでしょうか?」
「はい、2階建てで1階は店舗と小さい作業場の部屋、2階は居住として使える部屋があることが希望です。場所は繁華街近くで生活圏内にスーパー(市場)や銀行(商業ギルド)や病院(大聖堂で僧侶の治療)があると嬉しいです」
「そうですね。該当する物件は3件あります。内2件が賃貸。1件が売り物件です」
「3件しかないんですか?」
ノエルさんに話を聞くと城塞で街は囲まれており空いている土地がほとんどなく、限られた土地を使い建物を建てているとのこと。
そのため、土地はとても高額で伯爵クラスの貴族か、よほどの大商人でもない限り購入は難しいという。
ほとんどの住人は集合住宅で台所無しの狭い賃貸か、宿屋で雑魚寝の生活だ。
物件票を見ながらノエルさんと、回ってみることにした。
最初は賃貸から見て回り、1件目は思った以上に広すぎてパス。
2件目は逆にボロボロで好きな様に改装していいと言われたが、建て直した方が良いくらいに古くその代わり家賃は安いが改装費用が高くなるのでパス。
ちなみに俺が改装し退去した場合どうなるのか聞くと、大家の改装費用分が無くなり大家さんが一番喜ぶとのこと。だからその分、家賃が安いらしい。なんだそれは?
3件目はまだ売主がまだ住んでおり、入居者が決まり次第引っ越すとのこと。
物件票を見ると『築40年』とあり金額も購入にしては安い。
ローン購入で売れた場合はギルドが売主に一括で支払い、ギルドが債権者となりギルドに毎月支払えばいいとのこと。
ギルドは金利分、利益が出るというわけだ。
ただ返済能力が無いと貸し倒れになるので、審査があるみたいだ。
分離作業と『味元』販売をこなしていけば分割なら、それほど時間を掛けずに支払いできそうな金額だ。
ギルドもそれがあるから、俺に物件を案内できるらしい。
念のため、支払できなくなった場合のことを聞くと『奴隷落ち』だって。
やはり異世界、奴隷も定番であるのか。
歩いているとここ数日、見慣れた道に出た。
「ここです!」
ノエルさんに言われ見上げると『なごみ亭』の看板が!
中に入るとサリーさんが居て
「いらっしゃいませ~!?、えっ?」
「商業ギルドのノエルです。物件を見たいというお客様をお連れ致しました」
「エリアス君……」
「ただいま、サリーさん」
「おや、お知合いですか?」
「いや~、今ここに宿泊してるんですけど」
これなら見る必要がないな、と思っていると厨房からビルさんが出てきた。
ノエルさんを見て事情を察したらしく、頭に手をやり
「実はそういうことさ。親の残した宿屋を継いだのはいいが、お客はほとんど来ない。ここ数日お客はエリアス君一人だしな」
やはりそうか、俺も思ってたんだよ。
ビルさん一家3人を俺の宿泊費一日3,000円で養ってるかと思うと、扶養家族が3人できたような気がしていたが…。
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