第17話 マヨネーズ

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第17話 マヨネーズ

 住居兼作業場を探していたが、なんと売り物件は『なごみ亭』だった! 「宿屋をやめた後はどうする予定だったんですか?」 「実はまだ決めてないんだ。ただ赤字を埋めるために借金をしていて。売上がほとんど無いからお金もなくて、借金したお金で返済を繰り返し、この宿を売って返済に充てようかと思っているんだ」 「でもまだやり直せるのでは?」 「そうもいかないんだよ。このままいくと返済が出来ず、後2~3ヵ月で家族揃って奴隷落ちになりそうなんだ」と、ビルさんは寂しそうな顔をした。 「お父さん」  側に居たアンナちゃんが、ビルさんの袖を掴んで下を向いてしまった。 「後2~3ヵ月あるなら解決策を考えましょう」 「そんなことを言ったって」 「大丈夫、俺に任せてください!ノエルさんすみませんが、今回のことは一旦保留 にしてもらえませんか。また必要があればギルドに伺いますから」 「分かりました。では何かありましたら」と、帰っていった。  まず俺のアイデアを言った。 「これからはお金にならない宿泊は止め、食事一本に絞ります」 「食堂をやるのか」と、ビルさん。 「はいそうです、食事で数をさばいた方が儲かります」 「でもそんなにうまくいくものなのか?」 「先日、お渡しした『うま味調味料』はどうでしたか?これだけでお客を呼べると 思います。これからギルド経由で商店からも販売され大ブーム間違いなしです。 販売される前に先駆けで『うま味調味料』味元(あじげん)を使い、お客を獲得しましょう」 「そうなのか、もうそんなところまで話が進んでいるのか」 「はい、それと新しい調味料を開発します」 〈〈〈〈〈 調味料を開発?? 〉〉〉〉〉  ビルさん、サリーさん、アンナちゃんの声が揃った。 「それは俺がやりますから。まずは厨房にいきましょう」  そして4人で厨房に入った。 「大豆はありますか?」 【ユニークスキル】異世界言語発動!  地球にあった物の名前で言えば、該当する物の名前に置き換わり相手に伝えることができるのだ!  まず大豆を水に浸す。  それから適度なところで磨り潰し、水を加えて煮つめ汁を()す作業をする。これで『豆乳』の出来上がりだ。  それが終わったらボールに豆乳、植物油、酢が無いのでレモン汁、そして塩を少々入れ泡立て器で混ぜるだけ。  泡立て器が無かったので、腕時計を創った時の材料が余っていたので創ったのだ。(第3話参照)  泡立て器でも俺はよかったが、サリーさん達が作ると腕が痛くなるようだ。  だからそれ以降は煮沸消毒した、蓋付きの入物に入れ何回かシェイクして作った。  何かって?? 『マヨネーズ』さ。  この世界では鳥を畜産していないため、卵は手に入りずらい。(第10話参照)  個人で使う分くらいはいいが食堂で使うとなると量が必要となる。  そのため手に入りやすい大豆にして、豆乳マヨネーズにしたのさ。  豆乳にも卵と同じ成分が含まれており、マヨネーズが作れるのだ。  豆乳特有のクセもほとんどなく使いやすい。卵を使わないのでカロリーもオフに!  それとサラダに出来そうな野菜があるか聞いてみた。  ほうれん草、レタス、きゅうり、人参、キャベツなど。  似たような野菜はあったのでこれでサラダが出来る。  何度が分量を調節し『マヨネーズ』が完成!  さっそく生野菜にかけてみる。 〈〈〈〈〈 美味しい~!! 〉〉〉〉〉 3人の声が揃った。 「こんなに生野菜が美味しいなんて」  それに肉にかけても美味しいしと説明。  生野菜(サラダ)をサラダ サイドメニューとして店にも出すことを提案した。  その後、原価率の話をビルさんとした。  普通、飲食店なら原価は1/3くらいだと思う。  後は人件費とか諸経費とか。  利益が3割切らなければ十分、やっていけるはずだ。  ただ『味元(あじげん)』に関しては価格統一となり、俺から直接、お客に売っても金額は卸値の3倍の6,000円になることを話し了承してもらった。  それになるべく普段、手が届かないような高い食材を使い、低価格で供給することを勧めた。それが繁盛する秘訣ではないかと思う。  幸いビルさん達は家族経営だから、それほど利益は無くても良い様だ。  やってみて売上が上がらない場合は、その時に俺がこの店を買う約束をした。  これならビルさん達も安心だろうから。
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