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第22話 ポトフ
ドゥメルグ公爵家の厨房を借り、いよいよ食事作りだ。
【スキル】世界の予備知識発動!
世界の予備知識で調理レシビを探した。
俺の目にはパソコンを見ているようにレシビの画面が見え、そのレシビを読みながら調理をすればいいんだ。
かんたんクッキングの始まり始まり~!
まずはポトフを作ろう。
画面には
材料:肉、キャベツ、じゃがいも、玉ねぎ、ブロッコリー、水 とある。
まずは鍋に生活魔法で水を入れる。
(((えっ、生活魔法が使えるの(か)?))))
エリアスは知らなかった。
この世界は剣と魔法の世界だが魔法を使える人は貴族のみで、それも魔法が失わない様に貴族間は魔法を使えるもの同士の婚姻が多い。
そして魔法を使えない子供が生まれると一生日陰物となり、長男でも当主になることはできない。
庶民でも魔法が使えれば、王宮に雇って貰えることがあるくらい貴重なのだ。
生活魔法=魔法が使えるとなり、生活魔法を鍛えることにより攻撃魔法や回復系魔法が使えるようになるからだ。
たまに高ランクの冒険者が業績により、貴族になることがあるが一代限りの男爵(村や町などを治めている一番位の低い貴族)にしかなれない。
なぜならほとんどが領地経営などできない、『脳筋』だからだ。
エリアスは転移前に『剣と魔法の世界』と聞き、誰でも生活魔法程度は使えると思っていたのだ。
(それから火をつけて、と)
(((((えっ、火の魔法、二つの生活魔法を使えるのか(か)?))))))
肉、キャベツ、じゃがいも、玉ねぎ、ブロッコリーを適当な大きさに切り、鍋に入れる。
後は煮立ってからアクを取り、ストレージから『味元』を取り出し適量に入れ15分煮る。
器に移して、はい出来上がり!!
(((((えっ、マジック・バッグ!!))))))
薄いバッグから入物が出てくれば誰でも驚く。
エリアスはストレージを隠すために普通のバッグを普段から持ち下げているが、
マジック・バッグ自体は古代遺跡から発見される貴重で、縦横3m×3m入れば城が買えると言われるくらいの価値があるのだった。
マリーお嬢様は思う、
(やはりエリアス様はその高貴な顔立ちといい、生活魔法とはいえ二つも使えマジック・バッグも持っている。ドキドキがさらに酷くなったわ、顔も熱くなってきたし、私どうしたんだろう)
エリアスの料理をしているところを見ていたジャンは、
(や、やばい。俺はとんでもない失礼をしたのではないか?二つも生活魔法を使えマジック・バッグを持っている。普通はこんなことはない。この少年は貴族の御曹司様なのでは?しかも高貴な。だがこの国では公爵以上の地位は王族になる。黒髪に黒い瞳、海を越えた東の国に同じような容姿の民が居ると聞いたことがある。マリーお嬢様が連れてきたのもうなずける。なぜなら貴族同士なら問題ないからだ。お、俺は馬鹿だ。こんなことで公爵家を追い出され明日から路頭に迷うのか……)
いま料理長ジャンの頭の中は公爵家に勤めてからのことが、走馬灯のように甦がえっていた。
執事のアルマンはエリアスを見て考えている。
(この少年は。これは旦那様にお知らせしなければ)
「ジャンさん味見をしてください」
ポトフを別皿に分け手渡す。
「わ、わかりました」
(あれ、どうしたのかな?ジャンさんの態度が違うぞ)
一口くちに運ぶと
〈〈〈〈〈 ……………………………!! 〉〉〉〉〉
それからは目を見開き、まるで重機のショベルカーのように右手が口にポトフを運ぶ作業を繰り返す。
「いかがでしょうか?」
「旨い…」
その一言がすべてを物語っていた。
執事のアルマンさんがポトフを別皿に分け一口………。
そして頷き何も言わずマリーお嬢様用に別皿に分けたものを渡した。
そしてマリーお嬢様が口に入れると、
「美味しい、こんなに美味しいのは初めて。今まで食事は『食べられれば良い』
と思っていたけど、これなら毎日食事が楽しくなりそうだわ」
それを聞いたジャンさんが肩を落とし、口を『へ』の字にしていた。
「そ、そうだこの料理に比べれば、俺の料理は土のかたまりだ」
ぽつりと言うのが聞こえた。
ま、まずい………。
俺は他のスタッフが食べたそうにしているのを見て言った。
「他の方にも食べて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「あぁ、かまわない。食材はまだあるからな」
(あれ、また普通に戻った)
「ではジャンさんが作ってみましょう」
「俺が?俺は作ったことがないんだぞ」
「大丈夫です、お教えします。簡単ですから」
「か、簡単なのか。あんなに旨いものが」
「ええ、そうです。ま、とりあえず作って下さい」
①肉、キャベツ、じゃがいも、玉ねぎ、ブロッコリーを適当な大きさに切る!
②鍋に入れる。
③煮立ってからアクを取り、この入れ物に入っている『味元』を味見しながら適量入れ15分煮る。
④器に移して、はい出来上がり!!
「食べてみてください」
「お、おう」
一口味見をしてみると先ほどのうまい味が!
他の従業員にも分けると。
〈〈〈〈〈 これは旨い!! 〉〉〉〉〉
〈〈〈〈〈 なんて優しい味なの! 〉〉〉〉〉(優しい、てどんな味だよ)
〈〈〈〈〈 まるで神から与えられた、食べ物のようだ!! 〉〉〉〉〉
「こ、こんな簡単に作れるのか」
「この料理はポトフというのですが、鍋に塊のままの肉と野菜類を煮込んだものものを言います」
「ポトフだと」
「はい、煮込んだらこの『味元』を入れます」
「うま味調味料『味元』?」
「俺が調合し販売している、うま味調味料『味元』です。これさえあれば塩、胡椒は少量でも美味しくなります」
料理長ジャンはショックのあまり、口を開けアングリしている。
これがあれば誰がやっても、料理の腕は関係なく美味しいものが作れるのだ。
ジャンは新しい料理革命の足音を聞いた気がした。
エリアスにすれば料理長ジャンが落ち込んでいたので、元気付けようと作らせたことが裏目に出たことを知らない……。
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