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第25話 ドゥメルグ公爵
翌朝、朝食に降りていくと『なごみ亭』は朝の忙しい時間帯も一段落していた。
ま、起きるの遅いからね俺。
「お早うございます。アンナちゃん、サリーさん、アリシアさん」
「「「お早う(お兄ちゃん)ございます」」」
厨房に入りビルさんとマドックさんにも挨拶をする。
今日のメニューはオークのしょうが焼きだ。
同じ皿にキャベツの千切りを乗せマヨネーズをかけて食べる。
席数があまりないので、作ってもらってから二階の部屋に上がり食べている。
食事が終わりマッタリしていると
〈〈〈〈〈 エリアスお兄ちゃんにお客さんが来てるよ~ 〉〉〉〉〉
一人娘のアンナちゃんが、ドタドタと足音をさせ俺を二階まで呼びに来た。
昨日はアバンス商会だったけど、今日は誰だ?
そのわりにはとても慌てているようだが。
はっきり言ってこの世界での知り合いは少ない。
俺に会いに来る人は商売がらみの人くらいだろう。
降りていくとドゥメルグ公爵の執事アルマンさんが居た。
「エリアス様、ドゥメルグ公爵様がお呼びでございます」
(ひぇ~、なんだそれ。よし訪問用の礼服がないことを言い訳に断ろう!)
「実は先日、お話をした通り礼服がございませんので……」
「御心配には及びません。先日、そのように仰っていたので、何着か合いそうな服をお持ち致して入りますので」
なんとか断れないか考えたがビルさんに聞くと、貴族からのお招きを断るなんてありえないそうだ。
「どのようなことなのでしょうか?」
「分かりかねます。トバイアス様よりお呼びするようにとのことでしたので」
「分かりました、伺います」
俺は出かけてくることをビルさん達に伝え、今回は馬車に乗った。
馬車の中はアルマンと俺の二人。
これから一時間、気まずくなりそうだ。
そういえばアルマンさんは鑑定していなかったな。
【スキル・鑑定】簡略化発動
名前:アルマン
種族:人族
年齢:48歳
性別:男
職業:ドゥメルグ公爵家執事
レベル:22
特に戦う気はないので、ステータスを見る必要は無く鑑定は簡略化で十分だ。
(き、気まずい…やはりここは寝たふりでもするか?)
と、そんなことを思っていると
「トバイアス公爵様が、先日のポトフを召し上がり大変喜んでおりました」
と、話しかけてきた。
「良かった。喜んでいただけなのですね」
「はい、それはもう。エリアス様の件も公爵様の許可も無く、お屋敷に入れたことはマリーお嬢様のトバイアス公爵様へのサプライズとのことなので不問となりました」
(俺のその場の思い付きだったはずだが)
それからアルマンさんが公爵家に来るまでの話を聞いた。
12歳で中流階級の屋敷で仕事をし雑用をこなしながら、使用人の仕事を覚えた。
キャリアを積み大きな屋敷へ転職。
さらに経験を積み従僕として別のお屋敷へ転職。
従僕として仕事に磨きをかけていき、執事として転職し晴れて念願の執事に昇進できたとのこと。
そんな話だった。
だが俺にはどうでもいいことだ。
「ところでエリアス様は、どのようにしてこの国にいらしたのでしょうか?」
(そう言うことか。自分の身の上を先に話し、後から俺のことを聞こうて腹か)
「村とも言えないような名もない場所で育ち、両親が他界したのを機会に村の人から『外の世界を見た方がいい』と勧められアレンの街に着きました。まあ限られた土地を耕して生活していましたから、私一人ではとても耕せなかったでしょう」
「ではご両親が他界されたのをきっかけに、土地を村の人に狙われ追い出されたと言うことですね。お可哀そうに…」
この機会にアルマンさんに『様』付けは止めてほしいと言ったが、執事なのでお客様には敬意を示すそうで止められないと言われた。
その後、俺はアルマンさんに畑仕事や野菜のことなどを聞かれた。
そして都度『【スキル】世界の予備知識』で検索し視界の中に浮かぶ検索結果を、知っているかのように話していった。
畑の水は用水路を引き水車で脱穀、製粉をしていたことを調子に乗って話した。
(おかしい、これだけ畑仕事のことを知っているのに手が奇麗だ。まるでクワなど持ったことがないくらいに。それに小さな村で用水路を引き、水車とか言ったいたが脱穀、製粉をしていただと。まるで辻褄が合わない)
そんな話をしている間にどうやらお屋敷に着いたようだ。
門に入りしばらくしてから馬車が止まった。
馬車から降りると使用人4人で出迎えてくれた。
屋敷に通されまずは着替えを渡され礼服に着替えた。
黒と白を基調としたシンプルな服だ。
そして客間に案内されドアを開けると、30代前半の男性が座っていた。
「さあ、こちらに」とアルマンさんに促され席に着く前に挨拶をした。
今回はボウ・アンド・スクレープで挨拶はせず普通に頭を下げた。
「この度はお招きいただきまして、エリアス・ドラード・セルベルトです」
これからどうなるんだ俺?
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※ボウ・アンド・スクレープ
右足を後ろに引き、右手を胸の前に添え、左手を横方向へ水平に差し出す挨拶
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