第26話 ドゥメルグ公爵の思惑

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第26話 ドゥメルグ公爵の思惑

 ドゥメルグ公爵に呼ばれた俺は屋敷に着き、公爵と対面した。  アルマンさんがドアを開け先に入り、俺はその後に続いた。 『?!』部屋に入るなり嫌な感じがした。  見ると30代前半の男性がソファーに腰かけており、執事のアルマンさんが紹介を始めた。  現当主トバイアス・ビクトワール・ドゥメルグ公爵だ。  ドゥメルグ公爵が口を開いた。 「で、アルマンどうだった」 「はい、とても博学で貴族にも劣らない知識をお持ちだと思われます」 「ほう、ではエリアスとやら、君は一体何者なんだい?」  鋭い眼光で俺を見た。  俺としては『転移』して来ましたとは言えず、お決まりの『両親が死に村を出てきた』を説明した。 「そうなのかアルマン?」 「ただその割には辻褄が合いません。畑仕事をしていたと聞きましたが知識も豊富で、手がとても奇麗ですから」 「ふぅ~ん。二つの生活魔法を使えマジック・バッグを持っている。そして私の【鑑定】を弾くとは。君は一体、わが領に仇なすものなのか?」 (なんだこの展開は??【鑑定】をされたなんて初めてだ。部屋に入った時の嫌な気配はそれだったのか。それなら俺も!) 【スキル・鑑定】発動!  名前:トバイアス・ビクトワール・ドゥメルグ  種族:人族  年齢:32歳  性別:男  職業:アレンの領主ドゥメルグ公爵  レベル:25  HP 150  MP 200  筋力  20  攻撃力 22  丈夫さ 23  知力 40  器用さ 30  素早さ 30  運   22  状態:良好 【スキル】  火:LV3  剣術 :LV2  生活魔法:火 【ユニークスキル】  鑑定:LV1 【称号】  なし (ふ~ん。レベル25でこの程度なのか。久しぶりに自分のも見てみるか) 「ステータスオープン!」  名前:エリアス・ドラード・セルベルト  種族:人族  年齢:17歳(58歳)  性別:男  職業:製造卸業  レベル:1  HP 300  MP 500  筋力  50  攻撃力 50  丈夫さ 50  知力  100  器用さ 50  素早さ 50  運   100  EXP  0/20  状態:良好 【スキル】  生活魔法(火・水・氷・風・光):LV1  世界の予備知識:LV2 【ユニークスキル】  異世界言語:LV1  鑑定:LV2  時空間魔法ストレージ(カスタマイズ可能):LV2  創生魔法(『無』から『有』は創れない):LV2 【メンタルスキル】  沈着冷静:LV1  高速思考:LV1  魅力(人の心を引きつけ夢中にさせる力。発動しないこともある):LV2 【加護】  女神ゼクシーの加護  愛し子 【称号】  外面(そとずら)良く:LV2  慈悲の人:LV1 (俺の鑑定レベルがLV2だから弾いたのか。ストレージと創生魔法は使っているからレベルが上がってるな。職業も分離作業員から製造卸業へ変わり【称号】が『詐欺師のたまご』が無くなり、『慈悲の人』が新たに増えている。行いによって【称号】が変わるのか。しかしドゥメルグ公爵のステータスは俺よりはるかに引くい。いや俺のステータスが高いのか?俺がレベル上げしたら凄いことになるのかな)  俺は【メンタルスキル】高速思考で一瞬の内に考えた。 「仇なすなんて気はありません。それにそんな力もありません。生活魔法は両親も使えましたし知識も両親から教わりました。マジック・バッグは曽祖父の代から受け次いでいるものです」 「アバンス商会のアイザックから昨日、話は聞いている。アバンス商会は我が公爵家の出入り商人だ。馬車一台分の荷物を収納できるマジック・バッグなど国宝級だ。そんな人材を野放しにはできない」 (あぁ、やっぱりそうだったんだ。まずいことをしたな) 「君はこれから何をしたいのかな?」 「私ですか、美味しいものを食べ、その内便利な道具でも作り面白楽しく生きていければと思います」 「面白楽しくか、出来そうで出来ないことだな」 「色々と君のことは調べさせてもらった。商業ギルドで聞いたところでは『味元(あじげん)』という調味料も君の発案だとか」 「はい、そうです。誰かが思いつく前に、私が思いついただけです」 「ハッハッハッ、気を悪くしないでほしい。ギルドも国に属している以上、公爵家に逆らうことはできん。許してやってくれ」 ドゥメルグ公爵の笑顔が真顔に変わり、 「では塩の不純物を取り除く分離作業は?今までマジック・バッグで、そのようなことが出来るとは聞いたことがない!」 「マジック・バッグは古代遺跡から発掘される魔道具です。単一ではなくそんな機能がある魔道具もあるのでは?それになぜ、そんなことを聞くのですか!」 「それは勿論、君を取り込みたいからさ。新しい事業を起こし博学で生活魔法を二つも使え、しかも相対する火と水の魔法属性。そして異例なマジック・バッグを持っている。他の州にいや国に行かれないように、したいのさ。わかるだろう?」  どうしてこうなった。
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