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「……どうも、この度はおめでたい席にお招きいただきまして」
「なかなか似合ってんじゃねえか、どうだ、俺の組で働かねえか?」
「いたいけな一般人、裏社会に引き込まんといて」
サングラスを片手に外した志鬼と、それを見て冗談を言った騰は、二人して悪戯小僧のように笑った。
——いや、恐らくは、騰の場合は半分は本気だろう。
本音を追求すれば、志鬼が欲しくないと言えば嘘になる。
だが、そんな自分に靡かない志鬼に惚れ込んでいる騰は、矛盾を抱えた永遠の片思いをしているようだった。
もちろん切なさや悲しみなどない。そこにあるのは、心地いい、野郎同士のほどよい距離とバランスだけだ。
「しかし思った以上に豪華なイベントやな」
「当然だろ、待ちに待った襲名式だ、派手に行かねえとな。それにここの従業員なら、野間口と昔ながらの縁があるから口も固えしよ。呼んでる組員たちも俺が選んだ奴らだからお前らのことを口外したりしねえ」
「ああ、そのことなんやけどな」
「なんだ?」
「もうそこまで気にせんでええで。まあ、あまりにもあからさまに親しくするんは控えた方がええかもやけど、極道云々は別として、お前と個人的な付き合いがあるんは、大事な得意先にだけは知らせてるから」
騰は目を丸くした。
そこにはもう、トレードマークのサングラスはない。
ありのままの姿で迎える新たな日に、なんと嬉しい報告があったことか。
「……そうか、ったく、大したもんだよ、お前は」
「まあもともと極道の息子いうことは隠してなかったしな」
「あーーーっ!」
ここで騰と志鬼の会話に割り込む大きな声が響いた。
いつの間にか近くに来ていた、愛と同学年の凛々しい顔立ちをした少年が二人。
叫んだのは一歩前に出た短髪、その背後に立つもう一人は前髪を下ろしていたが、どちらも父親にそっくりだった。
騰の幼い頃に瓜二つの、双子の兄弟だ。
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