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千夜に絶頂を与えられたことに安堵した騰が、早る手で帯を解き和服を開くと、均整の取れた裸体が明るみになる。
千夜があの日応急処置した腹の傷は、まだ痕は残っているもののずいぶん綺麗に塞がっていた。
騰は体温が低く、いつも涼しい顔をしている……が、今は違う。
胴を跨がれ、呼吸浅く汗を滲ませる騰に見下ろされた千夜は、全身の肌が粟立った。
騰は慣れた手つきで避妊具をつけると、千夜の小さな肢体にのしかかった。
騰は自宅に女を招いたことがないため、通常ここに準備などないのだが、今日は先ほど風俗店の店主からもらったそれがあった。
やっぱり俺はついてる……などと騰は思いながら、千夜に先端をあてがい身体を進めた。
想像以上に狭く、千夜から苦しげな声が漏れる。
「もう、少しだけ、力を抜け、ゆっくり……そう、いい子だ」
騰の甘い低音が耳に響き、千夜はもう、普通ではいられなくなる。
熱くて、熱くて、蜃気楼を見てしまいそうなほど——。
奥の壁にぶつかった時、騰は少し上半身を持ち上げ、そしてそこで見たものに、驚きの表情をする。
千夜の目に、小さな透明の滴が浮かんでいたからだ。
「お、おい、大丈夫か!? そんなに痛いなら今日はやめ」
「…………わ、せ」
「——なんだって?」
慌てる騰に、千夜は紅潮した頬で柔らかく微笑んだ。
「千夜…………しあ、わ、せ」
騰の時が止まる。
何も考えられず、思わず幼い頃のように、自分のことを“千夜”と呼び喜びを口にした彼女。
騰はこの時ほど、自身の左目の視力が弱いことを恨んだことはなかった。
だが、それと同時に、ここまで右目がクリアな視力を保っていることに感謝したこともなかった。
——今、自分は一体どんな顔をしているだろう?
顔が燃えるようにカッと熱くなるのを感じた騰は、それを隠すように千夜を攻めた。
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