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ようやく宴の準備が整うと、来客……組員たちは各自自分の席に着いた。
端から端を臨むのが困難なほど広々とした和室の中ほどには、座布団と食事台が真っ直ぐ二列に並んでいる。
その左列の先頭に恵、右列の先頭に颯懍が座り、志鬼たちは特別に設けられた騰より少し下がった左横に、謙信と信玄は右横に控えていた。
部下たちより一段高い上座に堂々と腰を据えた騰は、今ある景色を生涯忘れぬようにとしかと見届け、胸に刻み込んでいた。
子供の頃から望んでいた、バカげているとも言える途方もない夢が、今確かに実現したのだ。
千夜は当然、騰のすぐ隣にいた。
騰の野望が叶う瞬間。
それをまさか妻という立場で、こんなに近くで見守ることが許されるとは、千夜の方が夢でも見ている気分だった。
「おめでとう、騰にい……あっ、旦那様」
「かまわねえ、そのままでいい」
感動のあまり以前の呼び名を口走る千夜を、騰は機嫌よさそうに肯定した。
アンバランスな瞳が、爛々と光る。
自信家で、負けず嫌いで、艶っぽいのに少年みたいで、怖いのに優しい、騰らしい表情。
「八代目組長襲名……おめでとうございやあああああす!!!」
一斉に沸き起こる部下たちの喝采を受けながら、騰は酒を煽る。
朱色の丸い盃に、ありったけの欲望と情熱を注ぎ込んで。
「……さてと、次はどんな悪さをするかな」
逆瀬川騰の旅は、恐らく死しても終わらない。
——了——
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