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――いいバイトないなあ。
さっきスーパーで買ったアルバイト情報誌をパタンと閉じると、熊本梢はため息をついた。
ふと顔を上げると、公園の遊具で子どもを遊ばせていた若い母親たちがこちらを盗み見ている。
梢は後悔した。素っ気のないTシャツとショートパンツ姿で公園のベンチに座り、半額シールの貼られた菓子パンをかじりながらバイト情報誌をめくっている自分は、どこからどう見てもカワイソウなひとに違いない。
梢は十七歳の高校二年生だが、背が百七十一センチと女の子にしては高いせいか、その三、四歳は上に見られる。そんな梢の頭の中をいっぱいに占めているのは、いかにしていいアルバイトを見つけるか、ということだった。
梢には膨大な夢(このときの彼女にとっては)があった。それを叶えるためには、膨大な金(このときの彼女にとっては)が必要だった。
学業の合間にする時給の低いバイトでちまちまやっていたのでは、とても間に合わない。割のいい求人を求めて情報誌のページをめくると、自然とナイトワークの特集に目がいった。写真の中ではきれいに着飾った女性たちが梢に向かって笑いかけている。
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