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「うん! ……うん? いや俺さすがにそこまでちっさくないから!」
「きれいだね、これ」
「タカセガイっていう貝でできてるらしいよ。ダイビング仲間の人がパラオまで潜りにいったらしくて、お土産にってくれたんだ。ふたつあるから、こずちゃんに一個あげるよ」
「ふうん……」
私は目の前でストラップをゆらゆらさせて眺めた。
「その人はさ、会えたの? マンタに」
「ああ、会えたみたいだよ。しかも超巨大級。すげえよな、こんなでっかいのが海の中をひらひらたゆたってるんだからさ!」
ケンタロは両手をいっぱいに広げてみせた。
「俺もいつかパラオに行くんだ。そんでマンタに会ってみせる」
夢を語るケンタロの瞳はいきいきとして、輝いている。こいつのこういう目を知っているのは、この教室ではわたしだけだ。
それがちょっぴり、嬉しい。
「梢さあ、あんなのとよく続いてるよねー」
昼休み、机をつき合わせてお弁当を食べていたクラスメイトの桃ちゃんが言った。
「あんなのとは、シツレイな」
「だって、そうじゃん。あんたと小熊じゃ、格差がありすぎるって」
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