プロローグ

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 桃ちゃんはウインナーを刺したフォークをもてあそんでいる。「高校生ふぜいに格差も何もないでしょ」と私は返したが、彼女は聞き入れない。 「梢ならもっといい男がいると思うな。モデル体型だし、成績だってそこそこだし。それが、何が悲しくて自分より八センチも背の低いチビを選ぶの?」 「七センチだよ。あいつ最近一センチのびたって喜んでたから」 「大して変わんないから!」  ここで、ケンタロこと小熊健太郎氏と私・熊本梢の関係を述べておく。  色気のない私たちではあるが、実は「つきあって」いる。つまるところ、「彼氏」と「彼女」なのだ。  私とケンタロの出会いは四月。二年生に進級し、新しいクラスではじめての席替えで隣同士になった。消しゴムを貸したり貸されたり宿題を見せ合いっこなんかしていたらよくしゃべるようになり、そのうちクラスの連中が「おまえらつきあっちゃえば?」と面白がって言うようになり、じゃそうしようか、となり現在に至る。  今では、私とケンタロは「二年C組のダブルベア」というセンスのかけらもないコンビ名を付けられる始末だ。ちなみに私が「ビッグベア」で、ケンタロが「リトルベア」。
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