55人が本棚に入れています
本棚に追加
四
夜10時過ぎ、ようやく仕事が終わり一人暮らしのアパートに帰った。
シャワーで頭を洗っていると、ふと妙な事を思い出した。
風呂場でだるまさんがころんだというフレーズが頭に浮かぶと霊が寄ってくる。
はあ、なんでこんな事を、よりにもよって今思い出してしまったのかと後悔をしながら、頭を洗っていると、目を開けられないという事もあってか、段々と怖くなってきた。
今、後ろに人の気配がするのは気のせいだろうか。
鏡に、自分以外の何かが映り込んではいないだろうか。
リビングのテレビが勝手についたりしないだろうか。
シャワーの音に混ざって笑い声が聞こえてこないだろうか。
……………………
…………
……
頭を洗い流し、恐る恐る目を開け、風呂場を見渡す。
何もない。
空気も軽く、いつもと変わらない。
一人暮らしだと、突然不安に襲われた時、心細い。
さてそろそろ上がるかと、ふと浴槽に目をやると。
浴槽から真っ青な2本の腕がダラリと垂れている。
その腕が浴槽の縁に掴まりグッと腕を曲げた。
(誰かが出てくる!)
私は急いで浴室を飛び出した。
その夜は友人の家に泊まり、翌日、すぐに引っ越しをした。
最初のコメントを投稿しよう!