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  宿題を教室に忘れてきたAさんは、深夜、学校に忍び込んだ。  懐中電灯を片手に、鍵が壊れている一階の保健室の窓から入り、4階の教室を目指す。  校内は真っ暗で静寂。自分の足音だけが響いている。  階段を登ろうとしたその時、頭上から気配を感じた。  懐中電灯で階段と階段の隙間をグゥーと上まで照らしてみると、坊主頭の女の子が、最上階の手すりから身を乗り出すようにして、真下にいるAさんを見下ろしている。  そして目をかっと見開き、歯を剥き出して大声で笑い出した。  笑い声が階段に響き渡る。  Aさんはあっけにとられ、暫く懐中電灯で彼女を照らし続けた。  何かがおかしい。  身体が無い。  手すりから身を乗り出しているのではなく、生首がぼうっと暗闇に浮いている。  Aさんは静かに懐中電灯を切ると、外に出るために保健室に走った。  笑い声が遠くなっていく。  安心したのも束の間、回り込むようにして、正面の階段から声が下りてきた  だんだんの笑い声が大きくなっていく  Aさんは死に物狂いで学校を飛び出し家へと帰った。  数ヶ月が経ち、あれは見間違えじゃないかと思えるようになったある日、Aさんの母が階段の手すりにタオルで首を吊り自ら命を絶った。  Aさんの母は、近頃家の中で、知らない女の笑い声が聴こえると、よく父に相談していたらしい。
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