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五
宿題を教室に忘れてきたAさんは、深夜、学校に忍び込んだ。
懐中電灯を片手に、鍵が壊れている一階の保健室の窓から入り、4階の教室を目指す。
校内は真っ暗で静寂。自分の足音だけが響いている。
階段を登ろうとしたその時、頭上から気配を感じた。
懐中電灯で階段と階段の隙間をグゥーと上まで照らしてみると、坊主頭の女の子が、最上階の手すりから身を乗り出すようにして、真下にいるAさんを見下ろしている。
そして目をかっと見開き、歯を剥き出して大声で笑い出した。
笑い声が階段に響き渡る。
Aさんはあっけにとられ、暫く懐中電灯で彼女を照らし続けた。
何かがおかしい。
身体が無い。
手すりから身を乗り出しているのではなく、生首がぼうっと暗闇に浮いている。
Aさんは静かに懐中電灯を切ると、外に出るために保健室に走った。
笑い声が遠くなっていく。
安心したのも束の間、回り込むようにして、正面の階段から声が下りてきた
だんだんの笑い声が大きくなっていく
Aさんは死に物狂いで学校を飛び出し家へと帰った。
数ヶ月が経ち、あれは見間違えじゃないかと思えるようになったある日、Aさんの母が階段の手すりにタオルで首を吊り自ら命を絶った。
Aさんの母は、近頃家の中で、知らない女の笑い声が聴こえると、よく父に相談していたらしい。
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