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お母さんへ
お母さん、今日、貴方が死ぬ夢を見たよ。
清々した気分になれると思ったのに、目が覚めたら動悸が止まらなかった。
お母さん、貴方ほど私に愛憎の意味を教えてくれた人はいない。
愛と憎しみは表裏一体だと聞いたことはあったけど、本当だったんだね。
貴方はしっかり者で頭の回転が速くて、オシャレで、手先も器用だよね。
リーダーシップもあって、私は貴方の二歩後ろをついて歩くのが常だった。
貴方はいつも私に服を買ってくれた。靴を買って、鞄を買って、書道を習わせ、ピアノを習わせ、塾に行かせてくれた。
私の人生の行き先も気付いたら貴方が選んでいたね。
お母さん、いつも私のことを気にかけてくれて、お金をかけてくれて、ありがとう。
皮肉にしか聞こえないだろうけど。
お陰で、周りからオシャレだと誉められ、字が綺麗に書けるようになり、ピアノも上手くなり、有名大学に合格できた。
でも、いつの間にか
周りからこう言われるようになった。
『貴方はお母さんにソックリね!』
私はお母さんの影になってしまっていたよ。
お母さんのコピーになった気がした。
それに気付いたとき、貴方を殺して私も死にたくなった。
残酷なことを書いて、ごめんなさい。
でも、消えてしまいたくなった。
お母さん、今、私ね、一人で服屋に行ってるの。心臓が口から出そうなほど緊張しながら、お母さん好みじゃない、私好みの服を買ってる。
この前は、吐きそうになりながら、一人で靴を買ったよ。鞄はこれから挑戦するつもり。
ピアノは弾かなくなった。大好きなイラストを描いて、大好きなマンガとアニメを見て過ごしてる。
お母さんに勧められた本は今は読めない。
少しずつ『私』になりたくて頑張っているよ。
お母さん、今の私の夢は貴方と並んで歩くこと。自立した大人の女性どうしが、喧嘩したり笑ったりしながら、一緒に元気に歩く。
だから、お母さん、それまで元気でいてね。
私も、がんばるね。
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