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ドドドの耳に、先ほどの子供の声が聞こえてきた。
「ねえ、パパ…あのすうじ…なに?」
「あれは単勝倍率って言って、数字が1に近いほど人気があるんだ」
「あのドドドという馬の1.2ってすごいの?」
子供が問いかけると、父親は笑った。
「このレースで1.2倍は、でたらめに速いってことだよ」
「なるほど。おとうさんのしゅっせも…そうだったらよかったのにね」
「いやいや…早いだろう。ついでに脱走の手腕もドドドには負けてないぞ」
「そうやってよあそびするから、おかーさんにおこられるんだよ」
ドドドはその親子に、君たちも頑張ってと心の中で声援を送った。
そして、自分に言い聞かせる。無個性じゃない。僕は埋もれてしまう凡庸な馬じゃない。だから、絶対に勝てる……と。
彼は電光掲示板を睨んだ。
示されている1番人気はドドドドドドドドド。単勝オッズ1.2倍と他馬を大きく突き放す人気を見せつけた。アナウンサーの話によると、ドドドが春の天皇賞でレコードタイムを出したことも、今回の人気に大きくかかわっているようだ。
ドドドはスタート地点にある発馬機を睨んだ。
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