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それから、俺達の大会が近いこともあり、冴木と会うことはなかった。が、何故か冴木のことが頭にちらつき、気になるようになっていった。
そして、俺と東堂、園田と黒川という先輩と出場した大会で俺達明南大が3位に入賞した。総合の表彰台には立てなかったが、山岳賞という特別な賞を獲った園田が笑って立っているのを見届けた。
その三日後、マンションのエレベーターの前で冴木と久しぶりに会った。
「すごいね、自転車部」
「あぁ、聞いたのか?」
「うん。園田君にね」
「そっか」
エレベーターが1階に降りた。俺達は中に入った。例の時間のため、二人きりだ。
「その大会な、最後のゴールは見てねぇんだ。俺はチームを引っ張って、途中で落車したからな」
「えっ……大丈夫なの?」
「怪我は大したことなかったし、最後のアナウンスで東堂が3位でゴールしたことを聞いた時は嬉しかった。それで、表彰式に行くための車の中で、俺はふと冴木に来てほしかったなって思った。まぁ、格好悪ぃとこしか見せらんねぇから、呼ばなくてよかったけど……」
言いたいことがまとまらず、次の言葉を探していると、冴木がそっと言った。
「……次は、俺も見に行くね」
扉の上の数字の4が光ったのを見た時、俺は少し慌てて冴木に言った。
「冴木……俺はお前が好きだ」
「えっ……」
冴木は驚いたように俺を見た。そして5階に着き、冴木が降りると、俺をみて言った。
「次の日曜のコンサート、見に来てね」
「えっ、あぁ」
冴木は笑って去っていった。俺は部屋に戻りコンサートのチケットを見た。
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