おおかみと 7匹目のこやぎ

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「お母さんは どうして僕の絵を見てくれないんだろう・・・?」 「お前は 見てほしいのか?」 「うん。だってすごく上手に描けたんだよ。学校の先生も 上手ね。お母さんに見せたら喜ぶわね。って  ほめてくれて」 「子供の絵を下手っていう教育者はいない。奴らはたまに 嘘をつく。」 「じゃあ  下手なの?僕の絵・・・」 「どっちかっつうとな。皿の上に乗ってる唐揚げの形は嫌いじゃねーぞ。」 「・・・クッキーだよ」 「そうかそうかwww」 苦い香りがうっすら漂う口を開けて、下品に笑う姿は醜く、恐ろしい。子どもだからと言って、手加減も遠慮も優しさも無い。 それでも僕は、あの日からずっと狼・・・彼女に会いに来てしまいたくなるのだ。適当な理由をつけて、放課後いつも直行する。この時ばかりは、家のだれもが僕に興味を示さないことが救いだった。 「・・・破いたのか。破かれたのか。」 「・・・破かれた・・・」 「・・・そうか。」 僕の服が汚れていても、僕が傷を作ってきても、狼は「そうか」以上、何も言わない。最初に会った時みたいに、川をじっと眺めては時々目を細めている。僕も、何を言うわけでもなくて、ただ狼のそばにいた。 「・・・狼・・・さんは・・・」 「ん?」 「・・・死ぬのは怖くない?」 「死んだことがないのに答えられっかよ。」 「・・・そうだね・・・」 あと何日・・・僕は日にちを数えるようになった。それと同時に、僕は誰にもしてこなかった質問を狼に投げかけるようになった。 「・・・狼さんは・・・好きだった?」 「何が?」 「・・・お父さんとお母さんのこと・・・」 「目の前でぶっ殺されちまったからな。」 狼は、どっちでもないような答え方をした。 「お前は?」 僕は、黙って首を横にふった。 「お母さんのことも・・・お兄ちゃん達のことも・・・あまり好きじゃない・・・」 「そうか。」 狼は、いつものように川を眺めた。 「・・・殺してやろうか」 「・・・えっ・・・?」 僕は狼の顔を見上げる。初めて会った時みたいに、目がギラリと鋭く光っていた。 「母親の他に6匹もいるんだろ?お前をのけ者にするやつが。」 「・・・それは・・・」 「いずれお前に母親の介護を押し付けるぞ。」 「・・・」 「一生奴らの奴隷になるつもりか。」 「・・・それは・・・イヤだ・・・」 「だったら話は はえーだろ。」 狼の言葉には、静かに獲物を追い詰める圧迫感があった。 僕は、今朝早くできた蹄のアザを しげしげと見つめた。 「・・・・・・殺してほしい」 「そうか」 僕が絞り出すように吐き出した7文字を、狼は少しだけ重い「そうか」で包み込んだ。
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