おおかみと 7匹目のこやぎ

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「お母さんっ!!」「怖かったよぉっ!!!」 鼻をつく液体を纏わせながら、憎い兄姉たちは揃って泣きじゃくっていた。 「私は警察を呼ぶ。あんた達、ここを動くんじゃないよっっ!!」 糸を切った母親は、木の陰に兄姉を隠すと公衆電話へ一目散に走っていった。 僕は、兄姉についていくふりをして道を戻った。 大きな黒いシルエット・・・息が細くなった狼は、ゆっくりと目を開けた。 「・・・いいのか・・・行かなくて・・・」 「・・・もともと、影薄いから」 「・・・そうか・・・」 ヒューッ・・・っと、狼は息を吐く。 「・・・のどが渇いたんだ。川まで連れて行ってくれ。」 「うん・・・」 僕は、よろよろと立ち上がる狼の脇を支える。少しだけツンとした匂いが立ち込める毛は、あの時と同じ煙草の匂いがした。 ウー・・・ウー・・・、唸り声がすぐ近くで聞こえるたび、僕の目頭が熱くなっていく。 狼も 僕も 何も言わなかった。 何も言わず、川のせせらぎを目指していた。 「・・・ここで下ろしてくれ」 僕が体から離れると、狼は膝から崩れ落ちる。ドサッと鈍い音で、青々とした草が潰れた。 「・・・狼さん・・・」 「・・・何だ・・・」 「・・・ごめんなさい・・・」 「・・・あたしな・・・」 息を絶え絶えとさせて、狼は仰向けに寝転がる。その顔は、苦しいながらもなぜか今までで一番優しく見えた。 「すっげー・・・今・・・いい気分・・・」 前が潤んでよく見えない。でも、僕の頬に毛深く温かい肉球が触れ、毛をゆっくりと撫でられる。 「・・・言っただろ・・・?仲間はいらないって・・・」 「・・・・・・」 「・・・きっとなぁ・・・ゲホゲホっ・・・お前は・・・自分が思ってるよりねぇ・・・すっげーいいやつっ・・・」 「・・・・・・」 何も言えなかった。 「さ、もうそろそろ時間だ・・・1人にさせてくれ・・・」 僕は、天を仰ぐ彼女を背に走り出した。振り返ろうとしても、体は言うことを聞かず離れていく。 バシャーンっ 弾ける音と共に、その大きなシルエットは消えていた。
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