おおかみと 7匹目のこやぎ

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――――― 「すみません。怪我の手当までしていただいて。」 怪物を倒してこちら側へやってきたというヤギたちは、汚れた上着を川で洗った。 「ヤギ同士、お互い様ですから。あの橋を超えてきたのですね。お疲れ様でございます。」 僕は、包帯を一番大きなヤギの角に巻いた。 その後、大きなリボン付きの花束を川に投げ入れる。 「・・・よろしいんですか?」 あっけにとられた様子で、中くらいのヤギが問いかける。 「はい。今日は・・・大切な方の命日なので。」 「そうだったのですね。」 小さなヤギは、僕の心境を察したのか、優しく微笑み、問いかけた。 「ここは、とても穏やかな場所ですね。ちょっと前までは、狼が出ると噂されていたようで、少し怖かったのですが・・・」 「狼ですか・・・今は、もう逢うことはないですねぇ。」 昔むかし  その昔 狼と 子ヤギが出会いましたとさ。 少し煙たい ほろ苦い話は きっと  後世には  伝わらないでしょう。
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