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「すみません。怪我の手当までしていただいて。」
怪物を倒してこちら側へやってきたというヤギたちは、汚れた上着を川で洗った。
「ヤギ同士、お互い様ですから。あの橋を超えてきたのですね。お疲れ様でございます。」
僕は、包帯を一番大きなヤギの角に巻いた。
その後、大きなリボン付きの花束を川に投げ入れる。
「・・・よろしいんですか?」
あっけにとられた様子で、中くらいのヤギが問いかける。
「はい。今日は・・・大切な方の命日なので。」
「そうだったのですね。」
小さなヤギは、僕の心境を察したのか、優しく微笑み、問いかけた。
「ここは、とても穏やかな場所ですね。ちょっと前までは、狼が出ると噂されていたようで、少し怖かったのですが・・・」
「狼ですか・・・今は、もう逢うことはないですねぇ。」
昔むかし その昔
狼と 子ヤギが出会いましたとさ。
少し煙たい ほろ苦い話は
きっと 後世には 伝わらないでしょう。
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