おおかみと 7匹目のこやぎ

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おおかみと 7匹目のこやぎ

「そこにいるんだろ?」 闇色の毛に覆われたシルエットから聞こえたのは、低い女の声。 廃棄された洗濯機の後ろで固まる僕を、狼は殺し屋みたいな目で睨んだ。 「・・・ここらへんのガキじゃねーな。」 「・・・・・・」 「なんだよ。口も聞けねーのかよ。」 「し・・・知らない動物には・・・」 気持ち悪さを飲み込んで、僕は声を絞り出す。 「・・・余計なこと・・・言うなって・・・お兄ちゃんが・・・」 「・・・傷のことも?」 「!!!」 僕は、とっさに右耳を隠した。すると、狼は大きな口を開けて笑った。 「冗談だよ。もしかして当たってた?」 なんてひどい狼だろう・・・僕はあまり狼のことは知らないけれど、意地悪で何でも食べてしまう ヤギにとって悪者だって、学校で聞かされてた。 「・・・で、そのポケットに持ってるのは何だ?」 狼に視線を移され、心臓がドクンとうずく。ポケットにねじ込んだクッキーが、グシャッと崩れた。 「こ・・・これは・・・」 「売り物だろ?」 「・・・・・・」 「万引きっつうんだぞ。」 「・・・やってない・・・」 「へぇ・・・騙せるとでも思ってんの?」 次の瞬間、狼の毛むくじゃらの手が僕の首を絞めた。 「ぐぅっ・・・!!!!!」 足をバタつかせても、大人の狼のには敵わない。そのまま体が持ち上げられていく。 「悪ぃことしたやつはなぁ・・・こうやって喰われちまうんだよ・・・」 あぁっと口を開けたかと思うと、果物ナイフのような牙が今にも首を掻っ切ろうと迫ってきた。 怖いっ・・・怖いよ・・・!!! 「ご・・・ごめんなさいっ!!!だからっお願い食べないでっ・・・うえぇぇーん!!!」 最後には、泣き声の方が大きくなってしまった。 チャリン 乱暴に振り落とされ、痛みと恐怖で震えながら地面を見ると、小さな銀貨が転がっていた。 狼は、その大きな体を屈める。 「お前が何をすべきか  分かるだろ?」
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