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それから『つぶみ』は、僕たちの共通用語になった。
最近は頼子とも前ほど頻繁に会うわけではないし、『つぶみ』も毎回、話題に上るわけではない。
今みたいに、飲んだ帰りなどにたまに登場するのだ、『つぶみ』は。
家の近くの公園まで帰ると、頼子が急に走り出してブランコに座った。僕も脇のゴミ箱に空き缶を捨ててからブランコに向かう。
僕が隣に座ったのを確認して、頼子が口を開いた。
「ねえ、横T元気?」
横Tは僕が今勤めている小学校の校長だ。せっかくいい気分だったのに仕事が頭を過ぎって、気持ちが下がる。
「元気だよ。元気すぎるくらい」
僕はそんな気持ちを吹き飛ばすようにブランコを蹴りながら答える。
「そっか、元気か、あのおばさん」
頼子もブランコを揺らし始める。近くに街灯はなくて、表情は読めない。
横Tはもとは僕たちが小学校五年生の時の担任の先生だった。本名は建畠なのだけれど、ボーダーの服ばかり着ているから、頼子が横Tと呼び始めた。TはティーチャーのTらしい。
僕が去年、今の学校に転任して来て、校長になっていた横Tと再会した。
「ああ、ひろきくんね。先生になっていたのね」
と挨拶の時に言っていたけれど、本当に僕のことを覚えていたのかはわからない。
僕は小学校時代はあまり目立つ方ではなかったし、横Tと仲良く話した記憶もないのだ。
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