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僕は今、平等と不平等の狭間で横Tと戦っている。
戦っていると言ってもあからさまに勝負しているとかではなくて、ただ僕が一人、心の中で闘っているだけだ。
横Tは「みんなで」とか「みんな一緒に」とかが好きだ。まあ、僕も嫌いではないけれど。
給食時間のことだ。
四年生にもなると大体は自分たちで配膳ができるから、僕は汁を注ぎ分けている子のサポートをしていた。
すると、子どもの一人がそっと僕に耳打ちしてくる。
「先生、校長先生が来るよ」
僕は廊下側のドアからチラッと顔を出し、廊下の奥に恰幅のいいスーツ姿の横Tの姿を確認する。
「了解、ありがと」
僕はその子にそう言って静かに笑う。
横Tは隣のクラスなどを回っていて、僕のクラスがちょうど配膳が終わったあたりで、この四年一組の教室に入って来た。
「あら、このクラスは準備が早いのね」
横Tはそう言って、みんな同じ量だけ注ぎ分けられた給食を満足そうに眺めていた。
「いただきます」
校長先生に見られているのでお喋りもなく、みんな静かに給食を食べ始める。
でも、子どもたちの半数は牛乳やパンに口をつけただけで、おかずには手をつけていない。それには理由があるけれど、横Tは気づいていない。
数分が経ち横Tが出ていったのを確認すると、僕はみんなに声をかけた。
「じゃ、減らす人、持ってきて」
すると教室の三分の一ほどが立ち上がり、汁椀や副菜の入った食器を持ってきた。
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