つぶみ

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 僕のクラスでは、食べれない分は最初に減らしてもいいルールなのだ。そして減らした後に、今度はおかわりしたい子どもたちが食器を持ってきて並ぶ。そうすればみんな時間内に完食できるし、食べ物が残ることもない。  そんなことをしたら食べたくないものは全部減らす子どももいるのではないか、と思うかもしれないが、そんなことはない。子どもたちだって、苦手なものでも少しは食べなくてはいけないとちゃんとわかっている。  給食はいろんな食材や料理と出会う場であることもわかっているから、全部残したりはしない。  だから、このクラスの子どもたちはみんな自分が何をどれだけなら食べられるか、ちゃんと考えている。  担任して二ヶ月もたてば、どの子が何が苦手でどのくらい減らせば完食できるかもわかってくる。  ほんの一口減らすだけの子もいれば、野菜のおかずは一口しか食べられない子もいて、様々だ。  おかわりする子も様々で、食べたいのになかなか言い出せない子もいる。  そんな子には、わざと残しておいたおかずを「余ったんだけど食べてくれない?」と言って差し出すと、笑顔で頷いてくれる。  横Tならきっと「同じ給食費を払っているのに不公平だ」と言うのだろう。中にはそういう保護者もいるかもしれない。  でも僕は、給食費というのは食事だけでなく『給食の時間』というものにも払っているのだと思っている。  同じ量の給食は確かに平等だけれど、何人かには多すぎて何人かには物足りない。むしろ、ちょうどいい量で満足している子のほうが少ないかもしれない。それは本当に平等とは言えない気がする。  自分に合った量を楽しく食べてみんなで完食できる方が平等であるような気がするのだ。僕の場合は。  食事というのは栄養補給というだけではなくて、それを楽しむものでもあると思うから。  
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