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それならば、校長の前でも堂々とそうすればいいのだけれど、そうはいかないのが僕だ。
横Tに給食の平等、不平等を論理立てて説明したとしても、きっと通じないだろう。
同じものを同じだけ同じ時間に食べる経験も大切なのだと説かれたら、それはそれで正しいように思えるし、僕にはそれを論破できるほどの考えがない。ただ、こうした方がいい気がする、それだけだ。
たぶん、横Tと僕は違っていて、合わないのだと思う。
子どもたちにとっても、僕がいい先生であるとは言えないのだろう。五年生になればクラス変えもあるし、担任も変わる。
もし、その担任が『給食は決められた量を残さず食べなさい』というタイプなら、子どもたちに苦労をさせてしまうことになる。
僕の考えが正しいのだと教えることは、次の担任は間違っていると教えこんでしまう可能性もあり、子どもたちとの衝突を生んでしまうかもしれない。
あくまでもこれは僕の考えであり、他にもいろんな考えがある、そういうスタンスをとるしかないのだ。
でも、たぶん子どもたちはそんなことは良く分かっている。だからあの子も、「校長先生が来るよ」とこっそり耳打ちしてくれたのだろう。
自分が教えていることが、正面からぶつかることではなく、こうやってこそこそと適応していくことなのだと思うと少し情けなくなるけれど、子どもたちは子どもたちで僕はこんな先生なのだと分かっているのだと思う。
子どもたちに『こんな人になれ』なんて偉そうに言えないけれど、何も言わなくても子どもたちはちゃんと各々、自分になるのだと思う。ただ、迷わないように、間違わないように教えるのが、僕の仕事なのかもしれない。
給食の時間だけでも僕はこの調子だから、いろいろ考えてしまってどうしようもなくなることも多い。
そんな時に僕は無性に頼子に会いたくなるのだ。会って何を相談するわけでもないけれど、ただ『つぶみ』を思い出すだけでも気分が晴れるから。
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