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「行こっか」
僕が言って公園の出口に向かうと、頼子もついて来る。
頼子の家はこの公園がある団地の真ん中にあって、僕の家はそれより少し上だ。
道路は坂になっていて、歩くと生ぬるい風に少し汗ばむ。
隣の頼子はやっぱり何を考えているのかわからないけれど、やっぱり笑顔で楽しそうだ。
僕はちょっと気になっていたことを頼子に聞いてみる。
「頼子、栄太郎はさ、知ってんの? つぶみ」
栄太郎は頼子の彼氏だ。頼子は半年前ぐらいから職場で知り合った栄太郎と付き合い始めた。
少し前に頼子が僕に紹介してくれて、三人でも何回か遊びに行っている。
「うん、栄太郎も知ってるよ、つぶみ」
そうか、知っているのか。
何だか不思議な気持ちになる。
頼子は今までにも何人かと付き合っていたけれど、たぶん『つぶみ』のことは話していなかったと思う。もしくは、話した後に別れたか。
栄太郎はちゃんと『つぶみ』を知っているのだと思うと、それならば頼子は大丈夫だな、と、何だか親の様にホッとしてしまう。
それと同時に『つぶみ』はもう僕たち二人だけのものではないのだと思うと、少しさみしくもある。
そして、五年生の頼子に「ちゃんとした大人になれませんよ」と言っていた横Tに、「どうだ、見たか」と言ってやりたいような変な気持ちになった。
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