新月の夜の告白

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今夜は新月だった。 30日に一回やってくる月が出ない闇夜。 偶然にもそんな夜に彼女に別れ話をしてしまった。 物心ついた時には好きだった幼馴染と、思春期の13歳に告白をして、付き合って5年。 楽しい事がいっぱいあった。 初恋も初めてのデートも初めてのキスも、俺の初めては全てその女の子とだった。 だが今日をもってそれは終わる。 彼女は地元を離れて大学に進学したし、俺は親父の跡をついで漁師になった。 この半年間は遠距離恋愛を頑張ってみたが、俺は寂しさに耐えられなかった。 彼女の夢をも応援できない様な小さい男にもなりたくなかった。 ならばこうするしかなかった。 『遠距離恋愛なんて続かない』 友人達に散々言われたがその通りだった。 今日が新月で良かったのかもしれない。 どんなにみっともなく泣いても、今夜なら俺の顔を照らす光は無い。 正直、6歳から一緒に育ったも同然の彼女と別れるのはとても辛い。 真っ暗な闇夜の夜道を灯も持たずに歩いている様な気分だ。 だが、それでは二人ともだめになってしまう。 そう思えて仕方がなかった。 いつかこの闇夜が終わる時が来ると信じたい。 今はまだその時を想像できないけれど、彼女と再会する時には今より良い漢になっていたい。 そして、もしもその時が来たのなら、また彼女に告白して一から初めてみよう。 それは同じ新月の夜に始めよう。 闇夜の新月は、始まりの夜でもあるから。
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