右腕

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 ……医療スタッフによる検査は、思ったよりも長く続いた。  そして、結論から言えば、原因不明の不調だということだった。ただ、あの状況から考えると幻肢痛の逆――「無いものをあると錯覚する」のではなく、「あるものを無いと錯覚する」状態なのではないか、ということだった。自分の意志で動かすこともできなければ、どうも触覚や痛みもなくなっているのだという。  目に見えていて、肉体として存在しているけれど、意識の中では失われた右腕。その感覚をどうすれば取り戻せるのか、はっきり言って想像もつかないということだった。時間経過で取り戻せるのか、それとも一生戻らないのか。それもわからない。  Xはその話を聞いても少しも動じた様子を見せなかった。だらりと垂れ下がった右手を左手で触れた、くらい。 「回復するまで、休んでもらった方がいいかしらね」  片腕が動かなかろうが『潜航』はできる。できるが、今までのようにはいかなくなるのは確かだ。特に、意識の上での利き腕を失ったとなると、色々と不便は多いことだろう。回復の見込みがわからない以上、もはや代わりのサンプルを用意して『潜航』させるなどした方がよいのではないかと、思ったのだ。  けれど、Xはじっと、どこか訴えるように私を見上げてみせるのだ。 「何? 発言していいわよ」 「やらせて、ください」 「X……」
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