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わー、なんだろー、お手紙?何かしらん?
私の脳みそゆりかご揺れる。
ゆ~りかぁごにゆ~れて~、し~ずかぁにぃね~むれぇ…。
いやいやだめだめ今寝たらダメ。
私のことをパパと呼び、ほぼA4サイズの紙をもち、おうちにまでやってくる妙齢の女の子。
ありえる現実としたら、あれしかない。
未払いの請求書とその取り立てだ。
きっと私はなんかのお支払いを知らずに踏み倒したんだ。
そうだよ、それだよ。それしかないよ…。
過去限りなく過去、遡れるだけ遡ろうとした記憶。
あかん、…さっぱりわからん。
しかも、だ。
ほら、折角見せてくれてるこの紙だけどさ、も、ほとんどおじさんのお鼻にぴたってくっついてるのね。
これで、読めるぞ、てひとはさ、もはや人類じゃないとおもうんだけど。
ごん、て蹴られた、若しくは踏まれた。
はい、うしろあたま、踏まれました。
気が付けば私の格好は目覚めたそのときの状態にほぼ戻ります。
突っ伏して頭を下に、半ケツでお尻を上に、て。
目覚めの時と違うのは、私のお顔の真下に何かが書かれてるらしい紙が敷かれてることと、見知らぬお嬢さんが私のお尻にどっかり座り込んでること。
「パパぁ。」
彼女がペコペコ弄ってるのは、私のスマホ。
あの、くぃっくいっは、おまえのスマホをお出し、だったらしい。スミマセン、わかりませんでした。
私を踏んづけた拍子に布団に埋もれてるそれは見つけられて、今彼女の手の中です。
「…パパ。」
ぽん、と投げ返されたスマホが私のうしろあたま、即ち後頭部にぽこんと当たります。
用は済んだ、ですかね。
そして長い長い沈黙。
ピンポンピンポンピンポーン
突如破られる静寂。
「お待たせしましたっ、うばうばいーつです!」
「ありがとうございますっ!伝々前缶ですっ、」
「こんにちはっ、注文表ですっ!」
「ぴんくのシロクマですっ!」
…や、ぴんくならもはやシロクマじゃない思います。
私に突っ込めたのは、その一件だけ。
彼女はひらりと立ち上がり、がごんと私の脇腹にけりで合図。
それ馬とかにするやつですよね。はよいけ、とか立て、とかの合図。
でも今はそれしてるとこ見られたらめっちゃ注意されちゃうんですよ。やめましょうね。
…はい、受け取ってきます。
受け取った。ごはん、いっぱーい。両手にどっさり。
咀嚼て字面はとても奇妙。
そしゃくおんて、なんかやらしい。
でも咀嚼音からの妄想をそっち方向に曲げられるのはたぶん俺だけの癖(へき)。
俺の半ケツにガッツリ座り込んで、後ろ頭に足置いて、あ、そのヒールが、スポッてはまってるそこのところ、ぼんのくぼっていうのよ。うなじの上の方の凹んでるとこね。
そして脳天ごしに響く見事な咀嚼音。
ワッシャワッシャワッシャ、
もっしゃもっしゃもっしゃ、
イッパイ頼んだものねえ。
俺のスマホで俺の金で。
ご丁寧に入ってないアプリはちゃんとダウンロードして。
あっ!!それはろてさりちきんだよね。最高の喰い音が出るやつ。
フライドチキンもいいけどね。
肉噛み千切る音、引き裂く音、骨折る音、潰す音交ざる、ロティサリーチキン。(あぶらじる啜る音や指をチュッて吸ったりしゃぶったりする音も交ざる。)
超えっちで俺は好き。カニ喰われてるよりずっと好き。
はむっ、からの、ぐわっしゅっ
ぴゅ。
おお、それは肉まんとかの系統。点心もいきはったんですね。
あ、俺のうしろあたまでステップ刻まないで…。
がつ…!かしっ!がつっ、かりっ。がしっ。
カツ丼だっ。それ。
やっぱ揚げもん噛み砕く、はひとつの完成形。咀嚼音コンプには外せない一品。
がっがっがっ、もしゃもしゃっ、
あー、ごはんの音。
腹にずんと響く間違いない音、うん。
ごきゅごきゅごきゅってなんかの炭酸が一気にそれもかなりの量が一気に喉を通っていく音。
ぷはぁとふーーっの長い吐息。
「パパ。」
はい。なんでしょう。
「パパ。…パパのさ、」
お?喋る、んですね?
もしかしたらワタシニホンゴワカリマセンのパターンかなて思いかけてました。
はい、なんでしょう?
「パパの心臓、ちょーだい。」
………pardon?
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