愛しい娘が「パパ。」と呼ぶ。

5/6
前へ
/6ページ
次へ
お嬢さんは納得いかない満タンの非常に不愉快そうな面持ち。 「ひどい、あたし、真剣なのに。」 確かに、君の望み、棚上げどころかただのダシ扱いにも思えてしまうよな。 「…グレてやろうか。」 ある意味、ごもっとも。 ものすごくごもっとも。 やっぱ、その望み、そもそもなんなの、そこからいきましょう。あなたの望みを検証しましょう。 大願成就、まずは王道突破を目指してみませんか?。 すると、ほぅっ…とタメイキ、乙女のタメ息。 「あのね、パパ。あたしね、」 うん、言ってみて、愛しい我が娘。 「赤ちゃんが産みたいの。」 …はい? 「産みたいの。」 おいくつでしたか…? 「14」 …マジレスしますが、お望み叶うには、しばしお時間待たれればよろし、ってハナシでございますよ?はい、それだけです。 最短で6年、父親的には10年後あたりに再考されるのが、丁度良さげか、と。そうそう、15年後でも全然遅くないぞ? 「産みたいの。」 ……ですからですね、 産めますでしょうけれども、今はお奨めできません、て話でございます。 まずは、心身ともに健やかにお育ち頂いて、成人を迎えて、それからのハナシでございますっ! これだけは、じぃは譲りませんし、譲れませんぞ! 「…ぶーーーっ!」 ふくれたお顔も可愛いなぁ、とつい見とれてしまうのだが、さすがの私も気が付いた。 そうだよな、おかしいぞ。 誰がどう解釈しても、結論は同じハズ。その望み叶えるには、まず、時が経つのを待ちなさい、だ。 私の麗しのベルゼブブの判断だって、そこらに落ち着くだろう。 何もワザワザ、俺の心臓持ってこい=俺を呼んでこい、なんて話に持っていく必要は、かけらもないはずだ。 はて…。 麗し愛しのベルゼブブの意図はなんだ……? 膨れっ面のお嬢さんの横顔にしばし見とれる。色白の透けるシルクの肌、端正な鼻筋、大きく憂う深い深い蒼の瞳、ああ、みればみるほど「ママ」そっくりだ…。うっとり…。 ……あれ? 「ママ」そっくり…?。 それって、。 「…なんも、今すぐ産む!でなくってもいいんだけどさ、」 お口の中でモグモグ言ってる愛娘。 うむむむ。 ギモンがひとつ。ぷくぷくと沸き上がる。 あれだな。やはり。 ギモン、には、確認だ。 うん。そうしよう。 百聞は一見、黙視、触感、嗅覚。 そうだ、確認だ。 確認するぞっ! さあ、娘よ!恥ずかしがるな。 その程度の畜生道、この父は何時でも突っ走れる!! ……。 瞬殺、を体験しました。 はい、いま、この瞬間です。 いま、私はその首を、両腿にがっつり挟み込まれて、脳天を床にぐいぐい食い込まされてます。 お稽古事は、ピアノとバレエと…システマとカポエラでしたか…?さすがに私のベルゼブブは抜け目ないです。。 確かに、瞬殺は最大の護身術です…。 あっ、首をそれ以上絞めないで、折れるから…。 「…パパッ!」 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。 でもわかっちゃった。 「あーあぁ。」 お嬢のタメ息。セツナイ吐息。 きれいな太腿が緩められて、首は折られることなく、解放です。 切なさに揺れてるそのお胸てば、…大胸筋だよね。 そんでもってさ、そのサポーターの中のさ…、たぶんね、僕も同じの持ってるよ。 あ、形状とか大きさでなくてさ、それ用の用途を備えるツール、てゆっか、それ。 「はーぁぁ」 タメ息タメ息、だよねぇ。 でも君と僕は同じタイプだわ。パスホートの性別てとこに、決してFeを付けてもらえないタイプ。 「そーなんだよねぇ。」 愛しの娘はしみじみと遠い眼をする。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加