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「久しぶり、桜庭君」と柔らかい声がした。
雄作はお母さんの肩越しで微笑んでいる。その光景を見ていた私を母が呼んでいる。
私は笑顔を作り三人の元へ歩み寄って悪戯っぽくお母さんの顔を覗きこんで言った。
「お母さん、びっくりしたでしょぅ?」
「ホント、最初雄作君が入って来た時は何を言ってるのかわからなかった。全く、連絡くれればそれなりの支度だって…ねえ?」と桜庭さんを見て笑ってる。
「すいません、俺が強引に送るよって言ったんで」
申し訳なさそうに頭を下げた。
「こんな所じゃなんなんで中に入って?」
母が言うと。
「いえ、今日はここで…。もう遅いですし、先生にお会い出来ただけで」
桜庭さんは静かに答えた。
「そうですか。では、こんな所で申し訳ないですが、今まで通り新庄雄作を宜しくお願いします」
お母さんが丁寧に桜庭さんに頭を下げている。その後ろで雄作も頭を下げた。
「わかりました。・・・・・自分は自分の夢の事ばかりで大切な人を幸せに出来なかったんです。だから雄作君には夢を叶えて秋保さんを幸せにしてあげて欲しいと、今日二人を見ていて思いました。ですから精一杯お手伝いさせていただきます」
桜庭さんは少し詰まりながらも母の顔を真っ直ぐに見て答えた。
それを聞いていた雄作が。
「桜庭先生、宜しくお願いします。あと…生意気な様ですが、今の桜庭先生にそう思ってもらえるだけで、その女性は充分幸せだと思います」
桜庭さんは小さく2回頷いた。
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