54人が本棚に入れています
本棚に追加
「着いたよ~、秋保起きろ~っ!」
「はっ!」
私は寝ていたらしい。起こされて黙ってさっさと車から降り、玄関に向かった。後にくっついて来た雄作に向かって。
「何?お母さんに用?」
と不機嫌に聞いた。
「えっ?先生に今日のセミナーの話しさせてよぉ~」
「そっ!ご自由にどうぞ!」
私は家に入り部屋に行き、部屋着に着替えリビングに降りた。雄作は私になんか見向きもせず、お母さんにセミナーの話しを熱弁している。お母さんも興味深そうに聞いている。
冷蔵庫を開け、お母さんが何故かお守りと言っていつも入れてあるジンジャエール、その横にある冷茶をコップに入れ、テレビを点けた。
【それでは本日の特集です。出す本出す本ベストセラー、滅多にメディアに登場しないスペシャルゲスト。作家の桜庭庸介さんです】
「えっ?えぇぇぇぇっ!」
私は悲鳴にも似た奇声を上げてしまった。
「どうした!」
雄作とお母さんがこちらを見た。
「ゆゆゆうさくぅ、この人!」
画面を指差した。
「あっちゃぁ~っ!俺、一番尊敬する作家さんぶん殴っちゃった」
雄作がショックの雄叫び。
「そうなの?」
お母さんが驚いている。私は今日あった事をお母さんに話した。お母さんは笑いながら。
「大丈夫よ、そんな事で怒らないわよ。穏やかな人だもの」
「えっ?お母さん知ってるの?」
「うん、元教え子」
お母さんはその後お茶を入れ直すねと台所に行ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!