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「ところで、先生、いやっお母さんは元気?」
ミラー越しに桜庭さんは私を見た。
「はい、元気です。でも後2年で50才ですから、桜庭さんが知ってる母よりかなりおばさんになってますよ」
私が答えると雄作が桜庭さんに聞いた。
「桜庭先生は秋保のお母さんとはどうやって連絡とって俺の作品を?」
「先生はもう25年位前だけど俺が卒業する前に転勤したんだ。それからずっと何処にいるのか知らなくて、そうしたら編集者にたまたま同級生がいて、そいつが知っていて、学校宛に手紙を出したんだ。お元気ですか?って…。返事は1回来て、それっきりだった」
「25年位前って今の秋保の歳と同じ位の先生かぁ~、想像つかないなぁ~。秋保24だしな?」
「いいから雄作は黙ってて!桜庭さん、それなのにどうして?」
私はその先が気になった。
「ある日先生から、お願いがありますって手紙が来て。それからだよ」
今度は雄作が真面目に聞いている。
「桜庭先生!正直言って俺、見込みありますか?はっきり言っていただいて結構です」
「ん?小説って上手い下手は多少はあるとは思う、売れる要素っては他にも沢山ある。まっ、長くなるから追々ね」
「えっ?追々って、じゃあ、これからも会ってくれるんすか?」
「あぁ、後で名刺渡すから」
ミラーから見える桜庭さんの目は優しく微笑んでいた。
「やったぁ」
喜んでいる雄作は子供のようだった。
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