氷の楔

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「…追わなくていいのか?」 「今更あの子を追って…かけてやる言葉なんて、あたしには無い。」 「そーかい。 それにしても酷い奴だなぁ〜。 何処から来たのか知らないけど、一人で会いに来た娘にわざわざ言わなくてもいい現実突き付けて追い返すなんてよ。」 「あたしはあの子を捨てたんだよ。 それを情に流されてその場凌ぎで良い母親演じて何になるって言うの? …いいよね、男は。 いつだってテキトーな事言って逃げられるんだから。」 「はぁ?? 男だってなぁ〜、色々背負わなくちゃいけないし大変なんだよ!!」 「あっそ。 …あの子が怒ったの初めて見たな。」 「あ?」 (昔は嫌でもよく笑ってたな…。) 「おーい、早く部屋入ろうぜー。」 「…寂しいだなんて、我ながら本当に勝手だね。 やっぱりあんたを捨てて正解だったよ。」
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