氷の楔

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 あれから一晩明けて次の日、私はなんとなく祖母の様子が気になっていた。 決定的な証拠は何も無く、単純にただ私の勘が働いてるだけなのだがそれがどうにも気になって仕方がなかった。  私はそれが正しいのか確かめる為に、夜二人が寝静まった後に居間の茶箪笥を調べた。  するとそこには予想通り母の名前と住所が書かれた紙があった。 祖母は過去にもこの茶箪笥から、祖父に内緒で買っておいてくれたスマートフォンを出して私にくれた事があった。 祖父は典型的な亭主関白で、食器等がしまわれてる茶箪笥には一切手を付けないからというのが理由らしい。  私は紙に書いてある住所をスマートフォンにメモして元の場所に戻しておいた。  もう二度と会う事はないと思っていたし、合うつもりもない筈だった。 しかし、母の存在を再び意識した時に胸の内に僅かな疼きを感じた。 この疼きの正体が何なのか、確かめなければきっとこの先絶対後悔する事になる。 あの時の私は何故かそう確信していた。
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