氷の楔

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「…誰?」 「えぇ…お前、ガキいるとか聞いてないけど。」 「何言ってんの。あたしに子供なんかいる訳… まさか…菫?」 「久しぶりだね。お母さん。」 「ほらやっぱガキなんじゃん!めんどくせぇ…。」 「ちょっと黙ってて。 …で?どうしたの?何か用?」 「用っていうか…その…元気にしてるかなって!気になって…。」 「別に。見ての通りだよ。それだけ?」 「えっと、あの…あぁあたし!スマホ買ってもらったんだ!これでいつでもお母さんとLINEとかできるし、それに…!」 「菫。5年前のあの時に何があったのか、今でもそれが分からない程あんたももう子供じゃないだろう?」 「…」 「悪いけど、あたしの人生においてあんたという存在は枷でしかなかったよ。 別にあんたを産んだ事は後悔していないけど、それでもあたしにはあんたの人生までは背負えない。 もうとっくに終わってるんだよ、あたし達は。」 「…ってだよ…。」 「えっ?」 「そっちが勝手に終わらせただけじゃん!! あたしの気持ちなんか考えないで! 何も聞かないで! 人に押し付けて! 逃げて!! それで終わりにできるんなら、あたしだってそっちの方が楽だった…。 でも…何があってもお母さんは…あたしのお母さんだから。 あたしは…ただ側にいて、抱きしめて、好きって言ってくれればそれだけで良かった…。 でも、お母さんは…それじゃ駄目だったんだね…。」 「…」 「もう、二度と…会いに来ないから…さようなら。」
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