ロッカーの中

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 更衣室のロッカーの中に何かがいる。  気配を感じるようになったのは三ヶ月ほど前からだ。  そのロッカーは、私のものではない。  同僚の青山さんのものだった。  青山さんは三つ年上で、人柄が良く、何でも丁寧に教えてくれる頼りになる先輩だった。  青山さんは三ヶ月前に、老人が運転する車に突っ込まれ、集団下校する小学生をかばうようにして亡くなった。  あまりにも突然だったので、私は嘆き悲しむ心の余裕さえなかった。  青山さんのロッカーの中身は、家族が引き上げ、鍵がかけられた。
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