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終章
その後、東部地区の基地で教官をしながら過ごした。
マスコミやネットで出回った情報では
敵方が、我が国の優秀な精子や卵子を買い取りや保存している
会社をスパイして卵子を盗み、
それを受精させて優秀な少年兵ひいては兵士として
育成していたという内容で
世界中が非難をした。
敵方の情報戦は失敗に終わった。
彼らとしてはDNAレベルで治療する前の
病弱で難病を抱えた子供に手を焼いたらしい。
そこで、どこから入手したのか分からないが
子供達の遺伝子上の母親である私が
自分たちと相対する前線で戦っていることを知った。
そこで私の素のDNAを持つ子で
比較的元気な子を送り込み、母親と涙の対面とやらをさせ、
母親を特定し、あわよくば遺伝子治療後の私を誘拐して
子供を産ませようと考えたのだろう。
考えただけでも腹立たしい計画だ。
我が国の上層部はその計画を逆手にとって
私の素のDNAで産まれた子供達の治療の為、
子供達を救出するという口実で
戦線を激化した。
私は本国での勤務となった。
万が一、彼らが私の存在に気付いた場合のリスクを考えたのだ。
私は久しぶりに夫と子供達との時間を持った。
新緑の眩しい季節、
大切な家族と過ごせるのは幸せなことだった。
だが、時々ふと思う。
私が産まなかった私の子供達の運命を。
私は背中でその思いを感じながら
家族との幸せな時間を過ごすのだった。
了
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