現在と過去

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彼はニコニコと愛想よく私にソファに座るよう勧める。 断ろうかと思ったが、話が長くなるのでと言われたので 座らせてもらうことにした。 そして出されたのは紅茶だった。 「よくこの最前線で紅茶がありましたね」 「うん。最初言われたとき、コーヒーならあると 嫌そうな顔をされたんだ。 だから自前の茶葉の缶を渡したら しぶしぶ受け取ってくれたよ」 職業柄無表情を旨とするあの中隊長付き副官に 渋い顔をさせるとはの内容が怪しい。 相当な迷惑をかけたんだろうなと思う位 紅茶は苦かった。 その紅茶をケロリと飲んでるドクターに 私は質問をする。 「それで『みつけちゃったんだ』とは何のことですか」 すると紅茶のカップをソーサーごとテーブルの上に置いた ドクターがニコニコしながら、 「うん、君の子供達♪」 「は?」 「ああ、君が産んだ子供達のことじゃないよ。 君、軍に入隊するために持病を治すのを引き換えに うちの研究所へ来たでしょ。 その時にほら、卵子を採取したじゃない。 君の持病ってDNA単位で治すと筋力強化とIQが 高くなるという特徴があるから」 「はぁ、確かにそういう契約で私は病気の治療と 強化人間化の手術を受けてこうして最前線に いますけれど。私の採取された卵子でできた子供達は 全て天に召されたはずですけどね」 私は淡々と言葉を紡いだ。
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