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ドクターは話を続ける。
「普通卵子や精子、受精卵は特殊な環境でないと
保存できない。
だが、その栞を特殊なカプセルに入れておくと
常温でどんなに不衛生な環境に置いておいても
受精できる」
「ちょっと待ってください。卵子の大きさは0コンマ以下です。
米粒大の栞の大きさだと・・・」
「そう、まだ実験段階だったんだ。
米粒大の栞には君の卵子と共に
卵子を生かしておく生命維持装置が
組み込まれている。
だからその大きさまで
小さくするのが当時の技術の最先端だったんだ。
どちらにしろ、その特殊なカプセルに入れて置けば
持ち出すのは容易い。」
「そうすると、その科学者は私卵子の入ったカプセルを
受精卵にする技術と設備のある環境にいたと」
「そういうことになるね」
ドクターは紅茶を一口飲んでカップをソーサーに置いて
テーブルの上に置いた。
私はため息をついた。
「それでどうしろと。
私が聞いたのは、私が提供した卵子が盗まれた、です。
産まれた子供は研究所作成の特殊なミルクが無いと
生存できないはずです。
それにそうやって生まれた子は全て
天に召された、
それだけです。
今になって盗んだ先が私の派遣先の
この最前線の地域が絡んでいるとは
お粗末にも程があります。
いくら私が戦闘狂いと言われようが
自分の血をひいた子供と相対したい訳ではありません」
私はㇲッと目を細めた。
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