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「恐れ入ります」
誇らしげなケイトは、シャルロットの喉元にネックレスを、耳には花の形のイヤリングをつけた。これで、どこに出しても遜色のない淑女の出来上がりだ。
立ち上がって姿見に自分を映すシャルロットに、もっと自信を持ってほしいとケイトは常々思っている。女性なら少しばかり自分自身に冷静でなくても構わないと思うのだ。
だが、それも、彼女の母、アンリの育て方によるものが大きい。
「あなたはアンヌやペギーとは違うのよ。小さいシャルロット。もちろん、彼女たちもそれぞれ違うのだけれど」
己の娘に対して冷静に言い切るアンリは、社交界で菫色の瞳で多くの殿方を魅了した。それは今も変わらずで、アンリが姿を見せるとどんな夜会も一気に華やいだ雰囲気が増すとも言われる。
その子供たちであるシャルロットの姉二人は、幼い頃から見事なプラチナの髪と色白で人目を引いた。長女のアンヌは、どちらかといえば父に似てキリリと意志の強そうな顔立ちは美しく、望まれてノイエール侯爵家に嫁いだ。
次の姉、ペギーは母に似て可愛らしく、バラの天使とも言われたが、おっとりしていてあまり騒がしいのを好まない。ほとんどを母と共に領地で暮らしていたが、王宮の夜会で出会ったフィリア辺境伯と結婚し、今は王都から離れた領地でゆったりと暮らしている。
そんな姉たちと共に育ったシャルロットは、素直に姉たちを誇らしく感じていた。
「人として美しくあるべきということとは別なの。誰でも素敵に見えるところと、そうでないところがあるわ」
アンリは子供たちにそういって、冷静によいところ、悪いところを口にする。客観的にどう見えるのかを口にして、それをどう受け止めるかを子供たちに考えさせる。
そうして育ってきたシャルロットは、自分のふっくらした姿がどういう風に人に見られるかということも当たり前のように受け止めていたし、それを悲しく思うのではなく、受け止めて物事のよい面を見ることに長けていた。
「お嬢様の前向きなところがよい方との出会いに繋がればよろしいのに」
「いつかそんな日が来ることもあるかもしれないし、来なかったとしてもそれはそれで素敵なものよ」
ケイトとシャルロットの間ではよくこんな会話が繰り返される。
ウィングフィールドにはアルマンという、シャルロットとは一つ違いの弟がいて、伯爵家は弟が相続することになっていた。
「わたくしは母様や姉さまたちのように美しくはないし、とても素敵な容姿でもないわ。でも、わたくしにも好きなことや得意なことはたくさんあって、素敵なところもたくさんあると思うの。だからわたくしは、父上も母上のことも、姉さまたちやアルマン、そしてなによりわたくしのことが大好きよ」
それがシャルロットの口癖だった。
ケイトの思いを知ってか知らずか、シャルロットは頬に手を当てて楽しそうに微笑んだ。
「今夜もウィングフィールドの名に恥じないように素敵な夜会にしたいわ」
そう意気込んだシャルロットをソファに誘って、ケイトは小さくため息をついた。
シャルロットの今日の一番の目的は、友人の子爵令嬢シュザンヌがゲストの一人、アンドリューと話をする機会を持つこと。
侯爵家の長男アンドリュー・フォークスは、シャルロットが知る限り、第一王子アウルとも仲が良い好青年だ。
「アンドリュー様は、少し遅れていらっしゃるみたいだからちょうどよいタイミングでお連れできるといいわね」
「承知しました。アルマン様にご挨拶されるでしょうから、お見えになられましたら声をおかけしますね」
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