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私の家は貧乏だった。
父はぐうたらと酒飲みでいつも酔っ払い、眠っていた。母はその分夜遅くまで稼ぎに出かけていた。その分の稼ぎはカツカツで、私と弟はろくな食事を食べれなかった。昼に給食を食べて、その後はなにもなしなんてザラ。服もずっと同じものを着ているからみんなから煙たがれていた。髪の毛もボサボサで、棒みたいにガリガリにやせ細っていた。
お母さんはそんな私や弟にいつも謝って、目を腫らしたまま光の差し込む玄関へと吸い込まれていく。私はその足にすがって、お願いだからいかないでと言う。振り払うこともできずに頭を何度も撫でた後、私の手を母はひっぺ返した。父のいびきが聞こえなくなるくらい、私はショックを受け、学校があるのに何時間もそこで立っていた。弟に手を引かれても、私は玄関が再び開くのをただ待ち望んだ。
それから数年がたって、私は今普通に女子高生をやれてる。私の昔を知っている人は誰もいない。非常にホッと息が付ける。
だからこそ、私はこの日常を壊したくない。それも、男とかそういう面倒なことで。どこのどいつだ、アホの拓様に変なことを吹き込んだのは。
固まった拓様は何か言おうと口を開いたが、私は横を通り抜け走り寄ってきた愛しい友人を歓迎する。
「梨香、帰ろうよ」
お団子ヘアのめちゃキュートな子が話しかけてくる。彼女は真理。しんりと書いて、まりと読む。すぐにジト目になってツンデレナトコもまたかわいいやつなのだ。私がニヨニヨして真理のことを想像していると、伝わったのかムッとしだす。
「なになに真理~、ムッとしないで~」
「また変なこと考えてるもん、ムッとするし」
ほんと、こういうとこがかわいいんだから。ムッとしているのを隠そうともしないでフグみたいに頬がふくらんでいく。その空気でパンパンの頬をニヨニヨしながら突くと横目で私をじろりとにらんだ。うわ、そんな目で見てもかわいいんだ。
「梨香のばか!先帰る!」
真理はカバンをひったくって指先から逃れるように教室から出て行った。でも、私は知っている。真理はそうやってつんけんして帰ったように見せかけて、廊下でゆっくり歩いて私が来るのを待っているのだ。だから私は真理が好きだ。女の子はみんなかわいい。
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