ポテチストロベリー、チョコレートガム①

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水だけで洗顔をし、歯を凄まじい勢いで磨く。エナメルが摩擦で無くなってしまいそうだ。眉毛の厚さ、厚いメガネで小さくなった瞳。美夏は何故一瞬映った顔はこんなにもブスなんだろうか、と弱った心で自分を追い詰める。母親の要素は薄い唇くらいだろう。じっくりと眺め出すと中々悪くないと思えるのだが、生憎そんな悠長な時間はない。慌てずともちょろげまみれの髪を必死にセットし、玄関まで超特急で駆けてゆく。いってきますが気恥ずかしさで腹が立つので言えず無言で大きな音を立てて扉を閉め出て行ったことを母に伝える。扉の向こうではきっとちゃんといってきますと言いなさい、と母が駆け寄ってきているのだろうが、全速力で走っている美夏には関係がない。 横断歩道が見え出したので走るのをやめ、小走りになった美夏は荒だった呼吸を休ませ出来るだけ白い目で見られないよう目立たないように前方の集団に溶け込む。横断歩道を渡ると中学まではすぐだ。この時間帯は一番通学者がごった返すので美夏はこの時間帯を避けていつも登校していた。何故なら前方の連中が束になって広がりすぎているので前に通り抜けることが難しいのだ。ワイワイ騒いでいる後ろをあまり近づかないように気を使いながら歩くのは誰でも嫌だろう。美夏は集団の後ろにつき、小走りから牛歩に歩みを変える。まったくちょっとは避けるそぶりくらいみせてくれればいいのに、こちらを気にもしない。美夏は憂鬱でため息を出しそうになりつつ、胸にずっと残っている衝撃を忘れようともがいた。 (いいから早く横に避けるかしてほしいわ、結構近づいている気がするんだけど。やっぱこういう人たちって周りの人がどんな気持ちになっているかわかんないんだろうな。てか、なんか盗み聞きされてるとか思われてないかな、別に聞きたくもないしクソ興味ないんだけど。はぁ、あーあ、なんでアップなんてしちゃったんだろ。もう恥ずかしい、恥ずかしすぎる。ってか、落ち込むよね、これは。誰も見てないんだ、結構力作だと思ったんだけどなぁ。…そんなに面白くないのかな、嫌だから面白いとか以前じゃん。なんかこの後の話書ける気がしない、でもなんで?私と同年代の子の奴あれと全然大差なかったと思うし、なんなら私の方が…。いやいや、読まれてすらいないゴミと比べちゃいけないわ。うん、家帰ったら消しとこう。これは黒歴史確定すぎる。小説に浮気してないで、絵の練習しよう。渡辺ちゃんがなんかハマったアニメあったらしいしそれ一緒に見て、でお互いに描きあって…あーあ、なんか小説でクラスの奴らとか見返せると思ったんだけどな、あいつら絶対私のことただのオタクって思ってるじゃん、情弱乙!まとめサイトとか2chとか見たことないだろうになんかオタクってこうだよねって感出してるけど知ったかぶりするなよな。マジで腹立つわ、容姿のことも多分影でバカにしてるだろうし、小説で有名になったらそんな目も変わるだろうね、あいつらみんな有名なものに弱いし。それに、 連は頭いいし私と同じで星新一好きだからそれきっかけで知ってもらったら…) と、妄想をしつつ下ばかり見ている美夏の随分前で友人と話しながら連が上履きに靴を入れていた。昨日のゲーム対戦で盛り上がった話題を再掘して、楽しげに自身のクラスへと進んでいっていた。
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